アステイオン

哲学

必ずたまたまウサギの穴へ落ちるために

2019年06月26日(水)
今井亮一 (東京大学大学院人文社会系研究科 博士課程・2014-15年度 鳥井フェロー)

病気の情報の蓄積は不安につながるが、自分に馴染みのある情報の集積は安心につながる。しかし、こうした「強いつながり」の居心地のよさを、新奇なことが起こらない退屈さへ転換することが必要なのだろう。もちろん「退屈」だと思うためには、まずは必然化、Integrity的理解を徹底しなければならない。そんなとき不意に訪れる偶然にこそ、Intimacyへ至るヒントがある。そういえば『ふしぎの国のアリス』の冒頭も、「アリスはとても退屈になってきた」だ。退屈なアリスにこそウサギが現れた。

玄田氏、森田氏、川添氏は、お互いに著作は知っていても、学芸ライヴ当日が初対面だったらしい。私含め、多くの聴衆もそうだ。まさにライヴとは「弱いつながり」が生まれる現場だ。その偶然からどんどん話題を広げていくお三方だからこその、刺激的な2時間だった。サントリー文化財団には、今後もふしぎの国へいたるウサギの穴をたくさん掘り続けていただきたい。

今井 亮一(いまい りょういち)
東京大学大学院人文社会系研究科 博士課程
2014-15年度 鳥井フェロー

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