第三に、BYDはEVの内部構造をより簡素にするためのモジュラー化を進めてきた。その一環が、BYDが「e-platform」と呼ぶEVの基幹部品のモジュラー化である。2016年からBYDのEVで利用されている「e-platform 2.0」の場合、駆動系のモーター、モーターコントローラー、減速器を一体化し、高圧系のDC/DCコンバーター、車載チャージャーなども一体化し、他に電子関連のドアロック回路やブルートゥースモジュールやタイヤ空気圧モニターなどなどを1枚のプリント基板上にまとめた。さらに、2021年から利用されている「e-platform 3.0」では駆動系と高圧系、インバーターなど8つのユニットを一体化している。これにBYD製のブレードバッテリーを組み合わせればEVがあらかたできてしまう。
こうしてEVの主要部分がモジュールとして一体化すると、最終組立ラインは通常のガソリンエンジン車よりも大幅に短くなるはずである。また、共通のプラットフォームの上にさまざまなボディーを載せれば、新車を開発する工数を大幅に減らしつつ、多くの車種を展開できる。実際、BYDはe-platform 3.0を使ってATTO 3、SEAL、DOLPHIN、ダイムラーとの合弁企業で作る「D9」などの車種を作っている(中尾真二「BYDの e-Platform 3.0が秘めた「統合ECU」と大衆車EV開発への可能性」EVsmartブログ、2022年8月24日https://blog.evsmart.net/ev-critique/byd-e-platform-3-0-integrated-ecu/)。
BYDのショールームではこのほかにガソリンエンジンと駆動モーターとを一体化したプラグインハイブリッド車用のモジュールも見た。
モジュラー化は自動車メーカーが需要の変化に対応する上で有力な武器となろう。EVの販売が鈍った時にプラットフォームのモジュールを作りだめしておいて、需要回復の時期に備えるとか、共通プラットフォームの上に載せるボディーの生産を調整することで、各モデルに対する需要の変動により柔軟に対応することができる。
さらに、BYDがプラットフォームを外販する可能性もある。中国と欧米や日本との関係が悪化するなか、BYDがこうした国々に自動車を輸出しようとすれば相手国から制限を加えられる可能性がある。相手国に工場進出して現地生産をしようとしても、これまた規制される可能性が高い。
一方で、 BYDのEVはお値段が手ごろな上に、エンターテインメント機能を搭載し、デザイン的にも優れているので自動車先進国でもユーザーの心をつかむ可能性がある。そこで、BYDがプラットフォームを輸出し、先進国側のメーカーがボディーを架装し、相手方のブランドで売るということが考えられる。プラットフォームはBYDが中国企業であることによって課されるハンディを乗り越えるための武器になるだろう。