新疆の民族別人口比率は1985年から2013年まできわめて安定していた。ウイグル族は常に自治区の総人口の46~47%、漢族は常に38~40%であった。これはかなり不思議なことだ。この間、内地の甘粛省や河南省などから相当数の移民が新疆に流入したので漢族は社会増が多かったはずである。一方、ウイグル族は漢族よりも出生制限が緩かったので自然増が多かったはずである。かたや社会増、かたや自然増が優勢なのに、結果的には両者が奇妙なほどバランスしている。この背景で強引な人口の調整が行われた可能性が疑われる。

また、のべ100万人ともいわれる大勢のウイグル族の人々が「再教育」施設に入れられたことについては多くの証言がある。先週のNHKの報道によれば、日本に留学経験のある知識人9人が家族にも行方を告げず消息不明になっている(NHK World, 2021)。誰も居場所がわからないのでは、「職業訓練のために再教育センターに行っている」という中国政府の説明が納得できるわけもなく、裁判を経ない拘留や投獄が行われている可能性が高い。

新疆の憂慮すべき人権状況に対して我々には何ができるであろうか。

欧米諸国は人権抑圧の責任者とされる人々を入国禁止にしたり、一部の新疆製品の輸入を禁止するなどの制裁に踏み切っている。だが、制裁や圧力に対して中国は内政干渉だと反発するばかりで人権状況が改善する道筋が見えない。

中国政府を人権状況の改善に取り組ませるには

人権後進国の中国は人権先進国の言うことを聞けとばかりに高飛車に迫るのでは問題は全く改善しないと思う。そう言われれば中国政府の側だって「そういうお前のところの黒人差別問題はどうなんだ」と反発したくなるであろう。

中国政府は新疆の人権状況に対する批判を、自身の支配の正統性自体を否定されていると邪推して批判を受け付けようとしない。中国が統治する新疆の人権状況を改善するには、中国政府にその気になってもらう以外にない。現在のきわめて険悪化した米中および日中の関係では難しいとは思うが、環境が許せば「人権対話」を試みるべきだと思う。

先進国だって人種差別、ヘイトスピーチやヘイトクライム、女性差別などさまざまな人権問題を抱えており、人権が完全に守られている国などどこにも存在しない。しかし、今日のグローバル化した世界では、人権弾圧を逃れて他国に来る人がいたり、サプライチェーンが国を跨いでつながっているので、他国の人権状況にも関心を持たざるをえず、自国の人権問題のことだけ考えていればいいというわけにはいかない。

人権を貿易交渉の対象に
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