中国では身分証は裏面に姓名、姓、民族、生年月日、住所、および個人番号が印字されており、コピーすることは特に妨げられていないようである。列車のキップをネットで買う時には個人番号を入力し、駅では身分証を機械にかざすことでキップを印字できる。また、ホテルの予約にも活用されている。ホテルにチェックインする時、中国人は身分証を提示し、ホテル側は身分証の個人番号の控えをとる。インドでは個人番号と指紋のスキャンとをメールで送るだけで、銀行の口座開設や送金、携帯電話の契約など、本人確認が必要なことがいろいろできてしまう(岩崎、前掲論文)。

日本人の場合も、特に海外へ行くときにはパスポート番号が役に立つ。たとえば飛行機のチケットはパスポート番号と結びつけられており、空港でパスポートを機械に差し込むと印刷されて出てくる。海外でのホテルや列車の予約もパスポート番号を使って行う。海外のホテルにチェックインすると多くのホテルではパスポートをコピーするであろう。

マイナンバーの利用が民間に開放されていればこんな風にいろいろと役に立つ場面があるはずなのだが、日本ではこれらの一切が禁じられている。

デジタル後進国を脱するには

実にチグハグなことに、日本政府はマイナンバーを民間が使うことを禁止する一方で、マイナンバーカードは民間で使ってほしいようだ。マイナンバーカードにはフェリカ(ICカード)が入っていて、そこに民間のクレジットカード、キャッシュカード、ポイントカードの情報を入れてほしいらしい。そうなれば身分証明にも使えてお金を引き出せるスーパーなカードになる、と考えているようである。だが、裏面をコピーすることが禁止されているようなカードを、「じゃあこれで支払いを」といってお店の人に渡せるだろうか。

特別定額給付金を支給する際にマイナンバーが役に立たなかったことで、日本はデジタル後進国であることを内外に印象付けてしまった。マイナンバーはデジタル化社会の基盤として役立ちうるものである。その潜在的可能性を実現するには、第一に、マイナンバーは「デジタルの名前」だと割り切り、社会で広く活用できるように法律を改めること、第二に、本人確認は書類のコピーで済ませるのではなく、個人の身体的特徴を確認するなど厳格化することが肝要であると思う。