トランプ政権の狙い通り、ファーウェイが基幹ICを調達できなくなり、そのままではスマホの生産を縮小せざるを得なくなったとしよう。ファーウェイはどうするかというと、おそらくスマホ事業をアメリカの輸出規制の対象となっていない中国の他社(オッポ、ヴィーヴォやシャオミなど)に売却する。その結果、ファーウェイは移動通信のインフラ機器を主たる事業とし、5Gの標準必須特許の15%を握る会社と、世界第2位のスマホメーカーの二つに分かれる。しかし、それによって中国の産業力はいささかも減じないだろうし、アメリカの「安全」が向上するとも思えない。
アメリカ経済にとって害しかもたらさない政策であっても、中国を叩いているそぶりを見せれば、コロナ禍によって健康と経済にダメージを受けた国民は拍手喝采するのかもしれない。だが、これは世界を引き裂きかねないきわめて危険な道である。まず、中国がなんらかの形で報復に出る可能性が高い。中国との貿易の縮小は物価高を通じて国民の生活にダメージを与えるため、トランプ政権はますます対外的な強硬策を打つことで国民の不満を外にそらそうとする。
第一次世界大戦以前の世界もグローバリゼーションが進展していた。それによって被害を受けた人々の不満を外の敵に向けさせるためにナショナリズムが鼓吹され、一つの事件をきっかけに世界戦争に突入してしまった(小野塚知二「被害者意識に彩られたナショナリズムへの回帰」『週刊エコノミスト』2017/1/3-10)。アメリカと中国はそうした歴史を思い起こさせるような危険な流れに乗りかけている。
