このように2013年の3中全会の決定はずいぶん画期的な内容を含んでいた。ただ、この決定はきわめて玉虫色であった。つまり、国有企業を守りたい、民営化なんかしたくないと思っている人でもこの決定のなかから自分の立場を支持する文言を見つけ出すことができるし、国有企業はどんどん民営化していくべきだと思っている人でも、その立場に沿った文言を見つけ出すことができる。
この決定の玉虫色ぶりを象徴するのが次の一文である。「ブレることなく国有企業を強固にして発展させ、ブレることなく民間企業の発展を奨励、支援、誘導すべきだ。」大阪人ならずとも「国有企業が優先なのか民間企業が優先なのか、いったいどっちやねん!」とツッコミを入れたくなるところである。
2013年の3中全会から丸6年たったが、現実もやはり玉虫色だった。国有企業の部分的民営化が進まなかったとはいえない。地方政府が管理する国有企業に関してはずいぶん民営化が進んだ。一方、中央政府が管理する大きな国有企業においては、2014年に中信公司(CITIC)に伊藤忠などが資本参加するといった動きも見られたが、その後はあまり大きな進展がなかった。
国有企業に再編強化の波
むしろここ数年目立ってきたのは、国有企業が民間企業を買収したり、国有企業どうしを合併することで大きく強くしようという動きである。
例えばIC産業では清華大学傘下の紫光集団という国有企業が、民間のIC設計会社の展訊(Spreadtrum)と鋭迪科(RDA)の2社を買収して子会社にしてしまった。紫光集団はアメリカのメモリーメーカーのマイクロンを買収しようとしてアメリカ政府に阻まれたり、NANDフラッシュメモリーの工場を立ち上げるなど、ICの国産化という中国政府の悲願を実現する役割を引き受けている。
鉄鋼業では、民間鉄鋼メーカーの台頭が著しく、国有鉄鋼メーカーは経営状況が悪化していた。そのなかでも赤字に悩んでいた武漢鋼鉄と、国有鉄鋼メーカーのなかではもっとも実力のある宝山鋼鉄とが2016年に合併された。さらに2019年には安徽省の馬鞍山鋼鉄も傘下に収めた。3社を合わせると、粗鋼生産量が8707万トン(2018年)で、世界1のアルセロールミタル(9642万トン)に迫る巨大鉄鋼メーカーの誕生ということになる。
もっとも、中国の鉄鋼業ではこれまで何度も国有メーカーどうしの合併が行われてきたが、合併後に内部で足の引っ張り合いになって、結局何年かすると再び分裂した。合併して見掛け上大きくすることはできるが、経営をしっかり統合して強い企業として生まれ変わるのは簡単なことではない。