九州電力の川内原子力発電所1号機が再稼動し、9月10日に商業運転を開始した。商業運転とは全検査を終了したということだ。2012年に発足した原子力規制委員会の定めた新規制基準に適合したと判定された初のケースだ。

 新規制基準の適用のために、原発は動いていない。政府は原発の規制を「世界一厳格な基準」(安倍晋三首相)と自賛する。しかし内実は「本当に安全になったのか」と疑問を抱くものだ。

 筆者は7月に川内原発を視察した。不思議な光景があった。プラント設備にワイヤーが取り付けられ、巨大な金属製の檻(おり)が置かれていた。調べると、地震や竜巻で主要設備が壊れないようにするための対策だ。国内で観測された最大規模の風速毎秒100メートルの竜巻や、この地域で過去に例のない620ガルの巨大地震に耐えるためという。

 しかし超巨大竜巻、超巨大地震など、起こる可能性は極めて少ない。この設備は無駄になる可能性が高い。そして起こる可能性のある、より小さな地震や津波、火事などの災害を想定した、対応に適切な規模の設備があるはずだ。

 こうした過剰とも言える規制対応は川内原発だけではない。日本の今の原発を、原子炉工学、機械工学の専門家はそろって「ゴテゴテプラント」と呼んでいた。さまざまな設備がつけられ、複雑になっているためだ。

10万枚の申請書類で疲弊

 その審査の姿も奇妙だ。日本の役所は書類好きの形式主義の問題があるとされる。規制委も同じだ。事業者が提出する書類は正式なもので8〜10万枚になる。大型書棚2つ分で、扱う量はその数倍だ。審査会合ごとに書類の山を各電力会社の社員がトラックを連ねて、東京六本木の規制委員会まで運ぶ。そして誤字脱字があれば書類を再提出させる。

 他国の規制行政では書類は電子化されているのに、日本では紙にこだわる。「紙で原子炉は安全にならない。むなしくなる」。ある電力会社の社員はつぶやいた。これも「世界一厳格な規制」の一面だ。