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さて、次は、このブログでのもう1つのポイントだ。作品そのものの魅力だけでなく、なぜその作品が生まれたか、あるいは写真家のバックグラウンドである。

今回も特殊な――いや、むしろ典型的なタイプに、ブロンファーは当てはまるのかもしれない。彼が作品の中で海辺を好む理由は、子供時代の言語障害に端を発している。彼はほとんど話すことができなかったため、医師が「海洋療法」(海辺で生活して療養する)を処方し、毎夏、母親と黒海で療養していたのだ。

また、彼の生まれ育った祖国を「ウクライナ」と呼ぶのは、正確ではない。厳密に言えば、ソビエト連邦だ。最も多感な青春時代に祖国そのものがほぼ一瞬にして消失するという未曾有の経験をしているのである。

ユダヤ人であるが、本人曰く、ソ連の国家政策(宗教心破壊政策)を経験しているために、当初イスラエルで自分本来の気分だと感じたのは、ニューイヤーイブの日、小さなプラスチック製クリスマスツリーの横でロシア名物のオリヴィエ・サラダを食べたときだけだったという。

極めて高学歴でもある。サンクトペテルブルクの大学で機械工学を学び、テルアビブではエグゼクティブMBA(EMBA)を取得している。ちなみに本職は、写真家でなく、エンジニアだ。写真は高校生の頃から馴染んでいたが、本格的に撮り出したのはわずか18カ月ほど前である。

とはいえ、1つだけ、これまた逆説的にいえば、イスラエルを拠点にする他の多くの写真家と極めて異なる点がある。イスラエルは紛争を抜きには語れない国だが、ブロンファーは意図的に、紛争の匂いを作品からほぼ完全に消しているのである。あまりにも日常的な現実となり過ぎていて、紛争の匂いを忘れるようにしているという。

子供の頃の言語障害だけでなく、波乱万丈の人生を生きてきたブロンファー。彼の言葉を借りれば、写真は自らを表現する手段というだけでなく、自分自身のセラピーにもなっているのだ。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Alexander Bronfer @bronfer

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