AP通信やニューヨーク・タイムズ紙などのアフリカでの仕事を通し、アメリカの農村地帯と同じように、グローバリゼーションの多大な影響を受けた光景――例えば、ビクトリア湖の漁師たち――を目の当たりにする。その後、妻が大学院に進むこともあってアイオワに戻り、以後はアメリカの根本的問題である農村部の崩壊に積極的に目を向けることになった。

そしてフレイジャーは、アイオワの問題はアメリカの問題であり、世界で起こっている問題にオーバーラップするものでもあると確信。アイオワをベースに、米農村部の問題をライフワークとしてドキュメントすることを決心したのである。それは「自分の責任だ」と語る。

単に、衰退する農村部や中小都市が顧みられていない状況を世に知らしめようとするだけではない。並行してあるのは、作品の中で常に心掛けているテーマ・主張だという、過酷なコミュニティーで暮らし続けようとする人々の「力強さ」と「忍耐強さ」への賛美だ。彼らが振りまく感情の動きに力点を置きながら、それを視覚化しようとしている。

コミュニケーションも彼の作品づくりの大切な要素となっている。被写体の人々に敬意を払うのはもちろん、被写体との相互関係を構築し、信頼してもらうよう努めているという。

そのため、撮影前は被写体との会話に力点を置き、カメラはバッグの中にしまったままにすることもある。また、数カ月から1年、被写体と過ごすこともあるという。だからこそ彼の作品は、アメリカのダークサイドへの視線とその中で暮らす人々への賛美がごく自然に同居しながら、同時にcandid(本物の、ありのままの)の匂いがするのかもしれない。

フレイジャーによれば、100年前は農村部の人口がアメリカ全体の72%だった。それが今、16%に激減しているという。インタビューの最後に、そうした現状を写真は変え得るのかと訊いてみた。しばらく間があった後、「人間はアートなしでは進化していかない」という答えが返ってきた。

ここでいうアートとは、もちろんフォトドキュメンタリーもジャーナリズムも含む。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Danny Wilcox Frazier @dannywilcoxfrazier

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