<ポートレートの中に古典的な要素とブラックユーモアを持ち込み、人間のオブセッションを探求する南米アルゼンチンの芸術家ロミナ・レッシア>
南米の偉大な芸術家には、コロンビアの小説家ガブリエル・ガルシア・マルケスをはじめ、魔術的リアリズムの匂いを解き放っている者が多い。アルゼンチンのブエノスアイレス郊外の小さな村で生まれ育った、ロミナ・レッシアもそんなタイプの芸術家だ。ポートレート写真の中に古典的な要素と皮肉やブラックユーモアを持ち込み、人間のオブセッション(取りつかれた脅迫観念)を探索している。
まだ36歳ながら、レッシアは世界各地の美術館やアートギャラリーで個展を開いている。小さいときからアートを学んでいたが、大学では経済学を専攻し、その後しばらくは多国籍企業で働いていた。余談だが、現代の優れた写真家やアーティストにはこの手のパターンが多い。
作品ごとにスタイルは異なるが、アナクロニズム(時代遅れ性)とジャクスタポジション(対立する2つの要素を並列すること。通常は別々に表すが、レッシアの場合、1つの写真の中でそれを行っている)は彼女が多用する大切な構成要素、あるいはテクニックだ。
例えば、「How would have been?」シリーズ。モデルはヴィクトリア朝のドレスで着飾っているが、そのシリーズの1枚にははっきりと歯の矯正器具(ブラスワイヤー)が見られる(下写真)。そこには古典と現代の対比、そして時空を超えて共通する脅迫観念がある。先述した人間のオブセッション、美へのオブセッションが強烈に表現されているのである。
スポーツ・ユニフォームをモデルに着せた「The Champions」シリーズも、ジャクスタポジションを使用したオブセッションへの探求だ。モデルにスポーツ・ユニフォームを着させているが、もちろんスポーツが焦点ではない。レッシアの言葉を借りれば、「栄光とか成功」で人を判断しがちな現代社会に対する問題提起である。
【参考記事】どこか不可思議な、動物と少女のポートレート