そしてアマゾンはメディアの会社でもある。音楽聴き放題のアマゾンミュージック、映画・ドラマ見放題のアマゾンビデオなどのサービスは、アマゾンのプライム会員なら誰でも無料で利用できる。プライム会員は全米で約8500万人。米国の半数から2/3の世帯がプライム会員だという推計がある。地上波が衰退する中で、アマゾンは一大メディア企業になりつつあるわけだ。映画祭での映画放映権の買い付けでは、タイムワーナーなど老舗メディア企業を差し置いて、最近ではアマゾンが競り落とすことが多いようだ。

ハードウェアのメーカーでもある。スマートフォンの次の花形デバイスといわれるスマートスピーカーでは、Amazon Echoが爆発的な売れ行きを維持している。Echoと連携するスマートホームなどのアプリ、デバイスの数は今年6月に1万5000を超えた。一方で競合するGoogleのスマートスピーカーGoogle Homeの連携アプリ、デバイスの数はわずか378。MicrosoftのAI「Cortana」に至っては、65しかない。米国のスマートホーム機器市場の支配力は、アマゾンの手中に落ちたと言ってもいいだろう。

参入の噂だけで、競合企業の株価が下落

大胆な戦略での快進撃が続くアマゾン。もはや無敵の状態だ。そしてこれまでの常識にとらわれない動きをするので、次にどの領域に参入するのか、誰も予測できない。

高級食材スーパーのWholeFoodsを137億ドルで買収する計画が6月に発表されたが、この買収を予測した投資家はほとんどいなかった。買収の本当の目的は何なのか。いまだに米国のニュースサイト上で議論されているのを見かけることがある。

【参考記事】アマゾンのホールフーズ買収は止めるべきか

ただ株式市場は、この買収を歓迎。アマゾンの株価は134億ドルも上昇した。買収計画を発表しただけで買収金額のほぼ全額を、株価の上昇によって手にした形だ。

発表文だけで自社の株価を上げることもできれば、参入の噂が競合する企業の株価を下げることもある。

今年1月にアマゾンが自動車部品のメーカーと契約を結んだらしいという報道があったときは、自動車部品を取り扱う小売大手のAutozoneの株価が5.1%下落。同様にAdvance Auto Parts社の株価は4.2%、O7Reilly Automotive社の株価は4%、Genuine Parts社の株価は3.7%、それぞれ下落した。

7月に不動産エージェントを紹介するページがアマゾンのサイト上に一時的に表示されたという噂がネット上で流れたときには、不動産業者紹介サイトのZillow社の株価が5.5%下落、翌日にはさらに5.9%下落した。

ニューヨーク大学のScott Galloway教授は、「今のアマゾンは、プレス発表だけで、アメリカのほぼすべての企業の株価を下げることができる」と語っている。

ネット税払えとトランプが攻撃