「前」とは、人工知能にどのような問題を解いてもらうのかを決めて、そのために人工知能にどのようなデータを与えて人工知能を賢くするのか、という作業の部分。「後ろ」とは、人工知能が出してきた予測結果を踏まえて、どのようなアクションにつなげるのか、そこを設計する作業だ。

 つまりビジネスやプロジェクトの全体を設計し、その中のどの部分を人工知能に任せるのかを決めるのが人間の役割になる。なぜなら人間には、プロジェクトを成し得たいという欲があり、信念があり、パッションがあるからだ。人工知能にパッションはない。(関連記事: 人工知能はデータを富に変えられない、人間の「欲」が不可欠だ

「なにかをしたい」という強い思いを持ってプロジェクト全体を設計し、その中に人工知能をどう組み込むのか。そういう作業こそが人間の仕事であり、そういう作業をこなす能力こそが、人工知能全盛時代における「頭のよさ」になっていくのだと思う。

 そういう意味で、プロジェクトの設計と実行の方法を説く『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』と、『スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義』 という2冊の本は、これからの「頭の鍛え方」を書いた指南書だと思う。

世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。

 丸幸弘氏は『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』の中で「イノベーションを生むのはPDCAサイクルではなくQPMIサイクルだ」と書いている。PDCAサイクルとは、ビジネスの世界でよく使われる言葉で、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の 4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善するサイクルのこと。何をすべきか計画を立て、その計画を実行し、その結果どの程度の成果につながったのかをチェック。問題点を見つけ出して、改善案を新たな計画に落とし込む。このサイクルを何度も何度も回していくことで製品やサービスの質を向上させていくという考え方だ。

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 丸氏は、このサイクルでは「今ある仕事をよくすることはできても、新しい仕事を作り出すことはむずかしい」と指摘する。そこで丸氏が提唱しているのはQ(クエスチョン、問い)、P(パッション、熱意)、M(ミッション、目的)、I(イノベーション、革新)のサイクルだ。「質の高いクエスチョンに対して、個人が崇高なまでのパッションを傾け、信頼できる仲間たちと共有できる目的に変え、解決する。そして諦めずに試行錯誤を続けていれば、革新や発明を起こすことができる」のだという。特に熱意は重要で、イノベーションが起きるかどうかは「問題をなんとしてでも解決しようという強いパッションを持った個人がいるかどうか」にかかっているという。

スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義

 ティナ・シーリグ氏も『スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義』の中で同様のサイクルを提唱している。同氏はそれを「インベンション・サイクル」と呼んでおり、「想像力」「クリエイティビティ」「イノベーション」「起業家精神」の4つの要素で構成している。

 成し遂げたいことを「想像」し、「クリエイティブ」に解決する方法を考え、それを世界に類を見ないような独創的で「イノベーティブ」なものに変えていき、起業するか起業家になったつもりで仲間を集めてプロジェクトを進める。このプロセスを回す能力は生まれ持ったものではなく、学ぶことができるし、学ぶことで「夢はかなえられる」という。

 表現は丸氏のサイクルと微妙に違うが、ものを成し遂げる能力を高めるサイクルは非常に似通っている。