EveryStamp以外にも、加速度、音質、気圧などのデータを取得できるウエアラブルデバイスEveryStickの開発も進めているという。

 
抗えない時代の流れ

 EverySenseの動きに期待する研究者がいる。東京大学の橋田浩一教授だ。同教授は、データを消費者自身が管理するという概念である分散型パーソナルデータストア(PDS)の研究の日本での第一人者だ。

「企業が集めた消費者のデータを別の企業に提供しようとするから話がややこしくなります。消費者自身が本人同意のもとに提供すればいいんです」と同教授は指摘する。「消費者が生成したデータは、消費者自身が持つべきだという考え方は以前からありました。ただようやく最近になって、技術的にそれが可能になってきたんです」。

「ビッグデータといっても自社のデータを解析しても分かることは限られています。企業が本当に欲しいのは、自社にないデータなんです」。しかしデータ漏えいやプライバシー侵害の問題があって、企業間で消費者データの流通はなかなか進まなかった。ところが消費者側でもデータを管理し、消費者の同意のもとでデータが流通するのであれば、何の問題もない。

 まさしくEverySenseが手がけようとしている仕組みは、PDSの1つの形になる。あとはこうした仕組みが可能だということが社会に認知されればいいだけ。「新聞などでPDSが普通に取り上げられるようになれば、その手があったかということで、データのやり取りに乗り出す企業が次々と出てくると思います。そうなれば、あとはドミノ倒し。一気に普及すると思います」。

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 EverySenseのような個人が自分のデータを管理する仕組みが普及し、あらゆるデータが自由に活用できるようになれば「いろんな人がいろんなビジネスを思いつくと思います」と同教授は言う。「効率的市場仮説や完全情報市場に近い状態ができてしまうと思う。日本の国力がすごく強くなると思いますよ」。

 真野氏も「個人が自分のデータを管理するのは時代の流れ。その流れには抗えないと思います」と語っている。

米国から狙う世界

 ところでEverySenseは、米国シリコンバレーに本社を置く米国法人だ。社長の真野氏は日本人だし、株主はインフォコム株式会社など日本企業が名を連ねている。世界的なインフラになることを目指して米国で設立したのだという。

「個人向けのオシャレなウエアラブルデバイスって日本であまりはやっていないので、ウエアラブルデバイスからデータを集める業務は主にアメリカでやろうと思っています。日本では農地のデータとか、産業界のデータを集めるところに注力しようと考えています。そしてそれをアジアでさらに発展させるつもりです」と真野氏は語ってくれた。