<ドラマや映画でよく見る救命シーンは、いざというとき本当に役に立つのだろうか。米国の研究によると、描かれる心停止への対応の多くは、今では推奨されていない方法だ>

突然の心停止は言うまでもなく一刻を争う事態だ。だが米ピッツバーグ大学公衆衛生大学院の研究によれば、テレビドラマなどにおける心肺蘇生法(CPR)の描かれ方には問題があり、そのせいで現実の世界で誰かが心停止に陥ったときに、周囲の対応が遅れてしまう恐れがあるという。

この研究は先頃学会誌サーキュレーションで発表された。テレビ番組でバイスタンダーCPR(救急現場に居合わせた人が行うCPR)がどう描かれているかを分析した研究はこれが初めてだという。

アメリカ心臓病協会は2008年以降、周囲の人が心停止に陥った場合には口移し式人工呼吸はせずに胸骨圧迫だけを行う「ハンズオンリーCPR」を推奨している。手順はたったの2ステップ。まず電話で救急要請をし、それから胸骨圧迫を行うのだ。これでも、医療従事者が人工呼吸と共に行う蘇生法と同じくらい効果的に主要臓器に酸素を送り込むことができるという。

にもかかわらず、テレビでは今も、あまり効果的でない時代遅れのCPRが描かれることがしばしばだ。

「学生向けの救命訓練でも勘違いが散見される。学生たちに『まず最初にやることは?』と尋ねると、『脈拍の確認』だという答えが返ってくる。(今時の)バイスタンダーCPRではやっていないのに」と、同大学院のベス・ホフマン教授は言う。

ホフマンはこうも語る。「訓練を始める前のアンケートでは、多くの学生がSNSやテレビでCPRの場面を見たことがあると答えた。この2つが今回の研究のきっかけになった」

細胞を「生物学的資産」として管理する時代へ──iPS細胞治療の最前線
細胞を「生物学的資産」として管理する時代へ──iPS細胞治療の最前線
口移し式人工呼吸は今では推奨されていない