米国がロシアのウクライナ侵攻終結に向けた和平合意の交渉を進めているが、欧州ではロシアの脅威の矢面に立つことを懸念する。欧州各国は、米国の圧力もあり国防費を増額し、軍装備品の充実化を図っている。だが強化は兵器などの物的資源にとどまらず、人的資源にも及んでいる。

兵役の見直しにも踏み込んだ欧州各国の取り組みをまとめた。

◎ドイツ

政府は11月に給与の引き上げなどを盛り込んだ新しい兵役制度を承認した。兵役は引き続き志願制だが、十分な新兵を集められなかった場合は徴兵制度を導入する可能性がある。

兵士数を現在の約18万人から26万人に増強し、予備役を20万人に倍増させることを目指している。

この提案は2026年初頭に立法化される予定で、義務的な登録と健康診断の制度が導入されるが、徴兵制度を導入する場合は議会で別途投票する必要がある。女性の徴兵制度は憲法改正が必要となるだろう。

◎フランス

マクロン大統領は11月、26年半ばまでに志願による新しい青年兵役制度を創設すると発表した。この制度は期間が10カ月間で18歳と19歳が対象となり給与も支給される。

26年に3000人、30年までに1万人、さらに35年までに5万人の若者を兵士として採用することを目指している。

マクロン氏側近によると、さらに30年までに予備役を現在の約4万7000人から10万人に増やす計画で、軍全体として約21万人の体制を構築することになるだろう。

◎英国

国防相は陸軍の規模を少なくとも7万6000人に増強することを目指すと述べた。29年に始まり、国防支出拡大の承認が見込まれる次期議会の期間中に実現したい意向だ。現在の陸軍は約7万4000人、予備役は約2万5000人で、全軍で約18万1000人の人員態勢となっている。

現時点で人員維持と近代化に重点を置いており徴兵制度の導入計画はない。

◎デンマーク

26年に徴兵期間を現在の4カ月から11カ月に段階的に延長し、33年ま⁠でに新兵数を約5000人から7500人に増強する。女性も、25年から徴兵登録を義務付けた。

◎フィンランド

男性のみに対する義務的徴兵制を‍通じて戦時の28万人の兵力を維持し、毎年約2万人を予備役に追加している。しかし、出生率の低下が将来的な予備役数を制限する恐れがある。

国防軍司令官ヤンネ・ヤッコラ将軍は最近、今後女性を対象に徴兵制度を拡大することを検討するべきだと述べた。女性は現在、志願で兵役に就ける。

男性の兵役義務は60歳までだが政府は65歳まで引き上げたいと考えている。こうした制度改正によって予備役は87万人から31年に約100万人まで増加する。

◎イタリア

クロセット国防‍相は11月に公表した戦略報告書で、ハイブリッド戦争の脅威への対応として5000人が稼働する新たな民間部隊と軍事部隊‍が緊急に必要だと述べた。新たな部隊は常時稼働が可能であることが必要とされ、当初1200―1500人を雇用し段階的に5000人‍まで増やす計画だ。

国防省は定期的な新兵募集活動で、26年に6000人の志願兵を「有期契約」で採用することを目指している。志願兵は25年に6500人だった。

◎オランダ

陸軍人員を現在の7万4000人から20万人に増強したいと考えており、特に予備役の拡充に重点を置いている計画だと報じられた。

◎ポーランド

北大西洋条約機構(NATO)最大級の軍事力を持つポーランドの国防省は11月、26年に約40万人を対象とした広範な軍事訓練計画の一環として訓練プログラムを開始すると発表した。これは任意で⁠全市民が参加でき、基本的な安全保障講座、生存訓練、医療指導、サイバー衛生の授業を実施する。

◎ルーマニア

ロシアのウクライナ侵攻以来、志願兵の募集を強化し給与や軍事教育を改善している。

軍隊の全体的な人員数は安定して⁠いるにもかかわらず、国防省筋によると、戦闘機パイロットや防空装備・‍ミサイル装備を扱う専門部隊など高度な技能を持つ人員の訓練と維持に苦労しているという。

議会は最近、18―35歳の男女を対象にした志願による兵役制度法案を可決した。4カ月間の有給訓練と終了後に3カ月分の給与相当のボーナスが支給される。

◎スウェーデン

17年に徴兵制度を再び導入。今年は約7000人余りが徴兵され、別途約1000人が志願した。32年まで1万2000人に増やす計画だ。

徴兵で軍隊の人員増強に必要な兵士の大半を確保する見込みだが、専門職の士官は今後5年間で大量退職が予想されており、こうした採用がより大きな課題となる可能性がある。

スウェーデン軍は23年末時点で9700人の専門士官を雇用しているが、35年までに少なくとも1万1800人に増やす計画だ。事務官職員も今後30%程度増加すると見込まれる。

[ロイター]
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