その一方で、自らはその口座にアクセスして、無認可の賭け屋に送金していた。大谷がそれを知ったのは、ついこの前だ。

水原がギャンブル依存症であることは間違いない。起訴状案によると、水原が賭け屋とのやりとりに使っていた口座を捜査官が調べたところ、水原は21年12月から24年1月までの間に1万9000回も賭けをしていたという。1日25回に近いペースだ。

1回の賭け金は10ドルのときもあれば、16万ドルのときもあった。結果は負けがはるかに多く、最終的に賭け屋に4070万ドル(約62億円)もの借金をつくることになった。

それだけ聞くと、水原はギャンブル依存症に陥った哀れな男に見えるかもしれない。だが、その借金を返すために水原がやったことから浮かび上がるのは、実にあくどい人間性にほかならない。

予想以上に悪質な手口

大谷の表向きの発言はどうあれ、大谷と水原は仕事仲間であると同時に友人だった。その友人から水原は巨額の金を盗んだだけでなく、大谷が英語を話せないこと、そして自分が英語の世界との橋渡し役であることを悪用したのだ。

大谷がプライベートをかたくなに守りたがることは有名だが、水原は、そんな大谷についてもっと知りたいアメリカのメディアやファンと大谷の間を取り持つ唯一の窓口でもあった。

そこで水原がやったのは、橋渡しではなく、誰が大谷にアクセスできるかを選ぶ門番だった。

当局の調べでは、水原の賭博に野球は含まれていなかった。もし含まれていたら、たとえ大谷は関与していなくても、MLBは大きな頭痛の種を抱えることになっただろう。

ある意味で、水原はスポーツ賭博の規制が正しいことを示す格好の例だ。ドラフトキングスやファンデュエルなど、きちんと認可されたスポーツ賭博業者なら、水原はあそこまで借金できなかっただろうし、そもそも職種上、利用できなかったかもしれない。

水原は別の意味でも大谷に大きなダメージを与えた。大谷は被害者にすぎなかったことがどんなに明らかになっても、実のところ大谷自身が賭博に夢中になっていて、水原が大谷をかばったのだといった陰謀論を信じるスポーツファンは一定数残るだろう。

自分を信頼してくれている人物から1600万ドル以上をだまし取るのにましな方法などないが、水原がそれで金の延べ棒でも買って、それを使ってギャンブルの借金を返済していたら、つまり大谷の口座から賭け屋に直接送金したのでなかったら、大谷への影響はまだ軽かったろう。

プロのチームが恐ろしく無能