こうした中で複数の専門家は、当面の課題はバイデン氏とネタニヤフ氏が意見の隔たりを制御可能な範囲にとどめることになると指摘する。

戦略国際問題研究所(CSIS)の中東プログラムディレクター、ジョン・オルターマン氏は、両者の関係に「致命的な打撃」が加わったとみなすべき根拠はなく、対話の扉が全て閉ざされたとは思わないと話した。

ただ米国とイスラエルの間に何の懸案もなかった時期でさえ、互いに険悪になる場面があったバイデン氏とネタニヤフ氏の関係は、今回の米国の棄権で一層亀裂が深まっている。

バイデン氏は今月MSNBCのインタビューで、ラファ攻撃は「超えてはならない一線(レッドライン)」と明言。これに対しネタニヤフ氏は、そうしたバイデン氏の批判には耳を貸さず、ラファ攻撃を断行すると宣言した。

ネタニヤフ氏に対しては、民主党上院トップでユダヤ系のシューマー院内総務でさえ、和平への障害になっており、総選挙で代わりの指導者を選出すべきと苦言を呈し、バイデン氏はこれを「素晴らしい演説」と称賛している。

一方で共和党のジョンソン下院議長は20日、ネタニヤフ氏を米議会に招待して演説してもらうことを考えていると明かした。そうなるとネタニヤフ氏にバイデン政権への不平不満を表明する絶好の場を与えることとなり、バイデン氏にとって打撃になるとみられる。

民主党のホワイトハウス上院議員はロイターに、ネタニヤフ氏は共和党と手を組み、米国とイスラエルの関係を「武器化」して右派勢力に有利なよう情勢へと導こうとしていると述べた。

ただ再選を狙うバイデン氏が選択できる対応策は限られる。共和党に親イスラエルの有権者を取り込む機会を与えないようにしなければならない上に、強力なイスラエル寄りの姿勢に幻滅している民主党左派の支持がこれ以上減るのも阻止する必要があるからだ。

ネタニヤフ氏はと言えば、ガザでの戦闘継続には国内の幅広い支持があることを承知しているので、あえて危険を冒して米国の許容限度を試そうとしているように見える。

イスラエル戦時内閣の閣僚は全員、ハマスを壊滅させて人質が戻ってくるまで戦闘を続けることに賛成で、国際社会で孤立するリスクが高まっていても、米国の要求に応じて強硬姿勢を後退させる気配は乏しい。

極右派のスモトリッチ財務相は、イスラエルは米国のパートナーであって、米国に「庇護」されているわけではないと強調した。

[ロイター]
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