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国連総会の権威も地に落ちた EDUARDO MUNOZーREUTERS

運よくウクライナが勝ったとしても、既に昨日までの国際秩序は崩壊している。

西側から見ればロシアは「ならず者国家」だろうが、2022年10月の国連総会ではロシアのウクライナ侵攻を非難する決議案に賛成したのは143カ国。35カ国が棄権し、5つの国が反対票を投じている。

武力による国境の変更は許さないという国連憲章は、もはや絵空事でしかなくなった。一般論として、新たに独立を果たした国々は民族の独立と国家の主権を熱く支持するものだ。しかしブラジルや南アフリカ、インドなどの新興大国は今、ヨーロッパ最後の帝国ロシアの暴挙を冷たく傍観している。

この変化は何を意味するか。いわゆるグローバルサウスが成熟し、アメリカの覇権主義的支配からの脱却を目指しているからか。いや、もっと深刻だ。私たちは今、第2次大戦後に築かれた国際秩序の崩壊に立ち会っている。見えてきたのは「ルールなき世界」だ。

戦後の国際社会を支えてきたのは国連憲章と世界人権宣言、そしてジュネーブ条約だ。いずれも幾度となく破られてきたが、無謀な暴走を止めるブレーキの役割は果たしてきた。大抵の国は自国の評判を気にするから、あまり無理はしなかった。

だが、今はどうだ。ウクライナのブチャでは、ロシア軍が撤退した後、惨殺された一般市民の遺体が転がっていた。

今のロシアは国連安保理の常任理事国でありながら、国際的な評判など気にしていない。同様に、ガザ地区の外側で虐殺されたイスラエル人の悲惨な姿を見れば分かる。

今の世界には戦闘員を止めるルールがない。絶望がテロルの火を燃やし、誰もそれを止められない。いったん壊れた国際秩序は、すぐには立て直せない。みんなが秩序の大切さを再発見するまで、しばらくはアナーキーな時期が続くだろう。

流れを変えるには、まず大国が争いよりも安定が大事ということに気付く必要がある。さもないと、小さな国までが悪しき本能をむき出しにして互いに争うことになる。

今度の米大統領選は、第2次大戦後に確立された国際秩序の価値を理解し、その再建を目指す人物と、それが焼け落ちても気にしない人物との対決になりそうだ。どちらが勝つかは、アメリカ以外の諸国にとっても重い意味を持つ。

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