<苦悩する主人公を『白鯨』に重ねて、孤独な中年男の最期の日々を描く。主役の演技は素晴らしいが、135キロのファットスーツに違和感が......>

ダーレン・アロノフスキー監督の最新作『ザ・ホエール』。タイトルの「ホエール」とは体重270キロの巨体の主人公ではなく、主人公の過去と現在の感情において重要な位置を占めるハーマン・メルビルの小説『白鯨』に出てくる巨大な白鯨を指している。

それでもこのタイトルを残酷な言葉遊びのように感じるかどうかは、この奇妙でひどく不快な部分も多い映画の受け止め方次第。個人的には「大爆死」という印象だ。

ベネチア国際映画祭でプレミア上映されると、主演のブレンダン・フレイザーは6分に及ぶスタンディングオベーションを受けた。確かに、フレイザーはゲイの教師チャーリー役を見事に演じている。

チャーリーは恋人を亡くしたショックから、アイダホ州のアパートに引きこもり、孤独な日々を送っている。

部屋は散らかって風通しが悪く、授業はオンラインのみでウェブカメラのスイッチは切ったまま。過食を繰り返して重度の肥満症になり、狭い室内を移動するのにも歩行器が必要なありさまだ。

だが引きこもりの孤独な男にしては、訪問者が後を絶たない。15分おきにチャイムが鳴って誰かしらやって来る。

ほぼ毎晩大きなピザ2枚を「置き配」していく配達人。自称「ニューライフ教会」の宣教師でチャーリーを救いたいと心から願っている青年(タイ・シンプキンス)。チャーリーが妻(サマンサ・モートン)と離婚して以来、疎遠になっていた娘(セイディー・シンク)。

17歳になった彼女は、家庭を捨てて唯一心から愛した年下の男のもとに去った父親を恨み、すさんだ日々を送っている。

なかでもチャーリーの唯一の友人らしい看護師のリズ(ホン・チャウ)は毎日のようにやって来て、厳しくも親身に、太りすぎて体の自由の利かないチャーリーの世話を焼く。

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まるでモンスター映画