<ネアンデルタール人と現生人類との違いはごくわずかだった。では、どうして私たちが地球で生き残ったのか>

地球上から姿を消して4万年近く。いまネアンデルタール人が脚光を浴びている。

近年の研究によると、太古の時代に生きた太い眉の私たちの親戚たちは、料理人であり、宝石職人であり、画家でもあったらしい。昨年は、ネアンデルタール人の遺伝学的研究の業績により、スウェーデンの古遺伝学者スバンテ・ペーボがノーベル医学・生理学賞を受賞している。

最も新しい発見を見れば、いま科学者たちの目の色が変わっている理由がよく理解できる。

ロシア・シベリア南部のアルタイ山脈にあるチャギルスカヤ洞窟は、ネアンデルタール人の基準からすると、ゴージャスな邸宅と言えるだろう。崖近くの洞窟には2つの部屋があり、入り口からは広大な渓谷を見渡せる。洞窟の住人たちは、緑豊かな土地を移動する馬やバイソンなどの獲物をすぐに見つけられたはずだ。時には、素晴らしい眺望を楽しむこともあったのかもしれない。

「理想的な住居と言っていい」と、トロント大学のベンス・ビオラ准教授(古人類学)は言う。

だからビオラは2010年のある集まりで、ロシア人の共同研究者から「実はサプライズがあるんだ!」と言われたとき、あまり驚かなかった。共同研究者がシャツのポケットから取り出したビニール袋には、保存状態が良好な下顎骨の化石が入っていた。

その化石は、チャギルスカヤ洞窟で見つかった骨だった。ビオラは一目見てすぐに、それがネアンデルタール人の骨だと分かった。

しかし、このシベリアの洞窟から得られた考古学的発見の規模は、ビオラの予想を大きく超えていた。過去11年間の発掘調査により、9万点の石器、30万点の骨片が見つかっている。昨年10月には、ビオラやペーボも参加した共同研究の成果が科学誌ネイチャーに発表された。

遺伝学的研究により、この洞窟で見つかった骨の主たちは家族関係にあることが分かった。父親と10代の娘など、遺伝的つながりのある少なくとも11人の骨が特定されている。ネアンデルタール人の家族集団が確認されたのは、これが初めてだ。骨の主たちはほぼ同時期に、おそらく餓死したものとみられる。

考古学的発見と、この10年で導入された最先端のテクノロジーにより、ネアンデルタール人に関する古い固定観念が打ち砕かれ始めた。

ネアンデルタール人は、棍棒を握って背中を丸めて歩き、ごく簡単な言語だけを発する原始的な人々などではなかったようだ。もっと知的で洗練された文明を持っていたらしい。

近年の科学的研究により、ネアンデルタール人への理解が急速に深まっている。同時にネアンデルタール人との比較により、私たち現生人類の特徴も明らかになりつつある。

現生人類とのDNAの違いはごくわずか