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©2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 ©1989 清水香子

瀬々 今回はレギュラーの抑留者が60人くらいいるのを3グループに分け、撮影しました。彼らもオーディションで選ばれ、その個性が主役とどう絡んでいくかというのがある。群像物はやっぱり一人一人を生き生きさせないと活気づかない。ラーゲリでも寝床の上段や部屋の奥にいるのが偉い人なので、「どこにいるか」という位置関係は重要なんです。

二宮 現地参加のエキストラの方々もいるんですが、設定に合わない人がいると、瀬々さんはとにかく奥に配置してバランスを調整する。細かいところまで徹底されているなと思いながら見ていました。

それに瀬々さんはメインキャストであろうと捕虜チームの人間だろうと、意見は平等にくみ取ってくれる。僕ら俳優はどんなに年数がたとうと現場仕事は変わらず、上の立場に行くことはないので、そういう人間からすればこれだけ心強い人はいない。

僕の意見と、監督の意見と、制作の意見が全くかみ合わないときは「うーん、どうしよう。その間を取るにはどうしたらいいんだ」と、一緒に考えてくれる姿もチャーミングでしたね。監督の中には、自分の意見についてきてほしいという人もいれば、みんなが納得して次のステップに行くには?と考えてくれる人もいて。後者のほうが、みんなで作品を作り上げていく感じがして、終始高いモチベーションで撮影ができると思います。

瀬々 僕は俳優の意見をいつも信じている。基本的に勘がいいし、言うことにはだいたい一理あるのでやってもらうことが多い。やってみて違う場合はやめるけど。

――二宮さんから監督に何か提案したことは?

二宮 ありました?

瀬々 確か2つあった。1つは「戦争ってひどいもんですね」というセリフ。(松坂)桃李くんが病室に来て、「花を摘んできました。きれいだったんで」と言うと、病床で書き物をしている二宮くんが突然顔をくしゃくしゃにして訴える場面です。

最初に会った日に、「こういうことを言いたい」みたいなことを言ってたんですよね?

二宮 そうでしたね。山本さんをあまり完全な人にしたくなかったので。人間はどこか不完全で、だからこそ戦争が起きている。いくらいい人でも完全ではないから、人間らしい弱いところをちゃんと見せたいと思っていました。

瀬々 もう1つも同じようなことだったかな。ヒーローみたいに描きたくない、普通の人でありたい、と。

二宮 みんなでそういう認識で行けたらいいですと、お願いしました。

僕は実話や実在する人物を演じる機会が多いんですが、その人物が素晴らしかったとたたえるだけだと、歴史の授業みたいになってしまう。われわれと同じ人間なのに、こんなにすごいことができたっていうことを伝えたい。

聖人君子みたいには描きたくないけど、それでも「すごいな」と自分が思わないと、すごい人はなかなか演じられない。山本さんの人生を見て、「そういう人もいるんだろうな」ぐらいでやるとピントが甘くなる。

その上で、自分がすごいと感じたところを「すごいだろ」というふうに表現しないためにはどうしたらいいのかを、現場で瀬々さんと一緒に考えました。

でも、今回はそれがわりとスムーズにできた。演技が素晴らしい共演者ばかりだったので、自分が(ボールを)ポンって投げたらそれで延々と遊んでくれる。みんなに助けてもらうようなお芝居のやりとりだったので、楽しかったです。

「男ばかりで盛り上がって、みんなで飲もうよ!と、そういったことが一切なかった」