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©2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 ©1989 清水香子

――原作から映画化するに当たって、メッセージとして一番残さなくてはいけないと思ったところは?

瀬々 これは過去の出来事ですよ、はい、ちゃんちゃんっていう感じにはしたくなかった。人間が生きている限り、震災でもコロナ禍でも、いろんな悲劇や不幸は常に起こり続けるわけですよね。その時にこの映画や山本さんのことを思い出して、何かを考えるきっかけになるようにしたいと思ったところはある。

現在にもつながる話というか、今の時代におけるこの映画の意味を問い続けながら作りました。

――二宮さんは少し斜に構えた役が多い気がしますが、今回の山本役はやりにくくなかった?

二宮 それはシンプルに、演じる上でのニュアンスの違いと言いますか......。山本さんを演じるに当たっての根幹は何かというと、「生きたい」というより「死にたくない」という思いが誰よりも強くあること。それは毎日、一回は頭の中で言いながら現場に入っていました。

「ダモイ(帰国)できる日が絶対に来るから。頑張って生きるんだ」ってみんなに言うけど、自分は生きたいっていうより、死にたくない。その違いは常に意識して、生死に関してはネガティブなほうにも取れる感情でいようと思っていました。

人間の卑怯なところというか、この人も人間なんだなっていうふうに感じたいと思っていたので、そこは大事にしましたね。

――シベリアにいたおじいさんへの思いもありながら演じていた?

二宮 そこは、あまり意識しなかったです。とにかく、興行とは矛盾してしまうのですが、より多くの方々に見ていただきたいのと同時に「もう一回見たくなる映画じゃなきゃいいな」とも思っていました。一回見て、もう見なくていい、こんな悲惨な記憶はもういいと、そっとふたを閉めてもらえれば、と。そういう気概はありましたね。

でも無力感というか、作品を仕上げている最中に(ウクライナ)戦争が起きたし、「僕らは何をやっているんだろう。エンタメというのは一体なんなんだろう」と考えさせられることはありました。

瀬々 山本さんは当時としては変人だったと思うんですよ。あの時代にああいうことやってるっていうのは、どっちかっていうと変人。だから二宮くん、結構やりやすかったんじゃないの?

二宮 (松坂演じる)松田も最初に言ってますもんね。「この人には狂気を感じた」と。

瀬々 それで思い出したけど、みんなで水浴びするシーンがあるじゃないですか。二宮くん、その現場でぼそっと、「ああ、こんな楽しい時もあったんだなー」って言ってたよね。

二宮 言ってましたね。

瀬々 やっぱり山本さんって、ああいうところでエンタメを与え続けた男だったんだと思う。僕も震災の避難所に取材に行ったことがあるんだけど、避難所でだってみんないつも苦しい顔をしているわけじゃないんですよ。喜びや出会いもあって、別れもあって、楽しく笑ったりすることもある。それが人生なんでね。

そういうことをやり続けようとした人が山本さんだった気がして。そういう意味では二宮くんとイコールな感じもします。

構成・大橋 希(本誌記者)

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