中国にとって衛士のようなMLRSは、その経済性ゆえに魅力的な兵器だ。大量の火器を配備したい国にとって、コストは重要な要素のはず。

「安価なミサイルを打ち上げられるようになれば、何千発も発射できるようになる」とゴールドスタインは言う。

防衛問題情報サイトSOFREPのショーン・スプーンツ編集長は本誌に対し、衛士はいくつかの留保付きであれば中国版HIMARSと言えなくはないと述べた。台湾有事の際にゲームチェンジャーになるかどうかについても同じことが言えるという。

アメリカが数百基のHIMARSを保有しているのに対し、スプーンツの見るところでは、中国が保有する衛士は20基程度に過ぎない。

もし中国が300〜400基の衛士を作ることができ、衛士向けのロケット弾を数千〜1万発、すぐに使える状態で用意できれば、相当に大きな影響力を持つことになるだろうと彼は言う。衛士は1基で一度に複数発のロケット弾を発射できるため、すぐに弾切れになるリスクがある。

命中精度については、中国側は衛星航法システムによりロケット弾の誘導が可能だとしているとスプーンツは指摘する。もしそうであれば、衛星との通信を妨害したり、ロケット弾に誤った誘導データを送ることも可能だということだと彼は言う。

<H4>衛星システムの信頼性がカギになるが

スプーンツはまた、中国の衛星システムは「かなり優れて」いるものの、通信妨害を受けやすい可能性もあると指摘した。安く作ろうとするあまり、中国のシステムには「不具合」が多いと彼は言う。この点、アメリカはシステムには「金に糸目を付けない」。

つまり、もし中国が衛士の大量生産に資金を投じることができて数千発のロケット弾を保有できるようになったとしても、衛士が中国版HIMARSという呼び名にふさわしい兵器となり、台湾有事の戦況を左右できるかどうかはシステムの信頼性次第――これがスプーンツの結論だ。

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