ここまでは日本の海底に眠る資源について見てきましたが、日本発の「科学技術の力によって海水や温泉から金を集める方法」も世界から注目を集めています。金は装飾品としての利用や資産価値があるだけでなく、優れた導電性や熱伝導性、耐食性を持つことから半導体や精密電子機器などに利用されています。

海洋研究開発機構とIHIの研究グループは、原始的な藻の一種であるラン藻を用いたシートを伊豆諸島の青ヶ島沖の熱水噴出口周辺に21年に設置しました。2年後に回収すると、7ppm(1トンあたりに換算して7グラム相当)の金が吸着していることを確認できました。

世界の主要な金鉱山の金含有率は岩石1トンあたり3~5グラム程度なので、これは非常に高い値です。また、銀についても142ppm(1トンあたり換算で142グラム相当)吸着していました。

海底熱水鉱床は、海底の熱水噴出口の周囲に作られる鉱床です。海底深部に浸透した海水がマグマ等により熱せられ、地殻から有用元素を抽出した「熱水」が海底に噴出し、周辺の海水によって冷却されると、銅や鉛、亜鉛、金、銀などの金属が高濃度で沈殿します。

世界的に「次世代の重要な鉱床」として期待されていますが、水深500~3000メートルにあるため、採掘技術と採算性がネックとなっています。ただ、日本周辺海域の海底熱水鉱床は比較的浅い水深に分布しているため、諸外国と比べると開発は有利と考えられています。

青ヶ島沖の海底熱水鉱床は15年、東京大チームが水深700メートル付近で発見しました。周辺で採掘された岩石には1トンあたり17グラム相当の金を含むものも確認されました。

非常に高濃度な金含有量ですが、海底の岩石を採掘し精錬するには莫大なコストがかかります。そこで研究者たちは、熱水鉱床では通常は安定した状態である金が「金イオン」の状態になることを利用し、シート状にしたラン藻によって金を集める方法を開発しました。

ラン藻は重金属を吸着する性質があることが知られています。細胞膜がマイナスに帯電しているため、熱水鉱床の高温高圧環境によってプラスに帯電した金イオンが引き寄せられます。この吸着性はラン藻の死後も維持されることが分かったため、海底熱水鉱床からの効率的な金の回収の検証が行われました。

その後、研究チームは24年、秋田県の玉川温泉にラン藻シートを約7カ月間設置し、30ppm(1トンあたり換算で30グラム相当)の金の回収に成功しています。日本には1トンの鉱石から約20グラムの金が採れる、世界水準の数倍の品位(含有率)を誇る菱刈鉱山(鹿児島県)がありますが、それと比べても驚くべき値です。

21世紀になって、金属資源は従来の陸の鉱山だけでなく海中や都市鉱山(廃棄された家電製品などの中に存在する有用な資源)にあるものをいかに有効活用できるかに注目が集まっています。日本ならではの豊かな海と温泉を利用すれば、資源大国になる未来も夢ではないかもしれません。

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