支持者は執拗で攻撃的

いつの時代にもアメリカに存在していたこの動きは、以前に増して強まっているのかもしれない。「政府と医療と大企業はある種の闇の協定を結び、市民にそれを押し付けているとアメリカ人は昔から感じてきた。この薬は服用すべきでないと自分に命じる権利は誰にもない、という感情はその一環だ」

新型コロナのパンデミックは、医療の自由というイデオロギーの中でも、とりわけ強力な傾向に拍車を掛けている。もう1つの要因が、リベラル派の「ディープステート(国家内国家)」に不安を抱く保守派という構図を取った政治的分断だ。

パンデミックの下、党派的偏向が医療不信を過熱させていると、グロスマンは言う。そのせいもあって、ヒドロキシクロロキンや消毒液注射、より最近では過酸化水素吸入など、時に危険なエセ治療法の誇大宣伝が加速している。

医学的審査に合格する見込みは薄いものの、新たに幅広い支持を獲得しそうなのが、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)系抗鬱剤フルボキサミンだ。イベルメクチンと同様、初期研究ではフルボキサミンの抗炎症作用に効果が期待できそうだとの結果が出た。アメリカでの大規模臨床試験は、否定的な予備結果を受けて9月半ばに中止されたが、ほかに複数の試験が継続中だ。

リバプール大学のヒルは今、HIV抗ウイルス薬の開発に携わったときの興奮や評価と程遠い経験をしている。イベルメクチンの初期研究を否定して以来、絶え間ない憎悪の標的になり、「イベルメクチン支持者は執拗で攻撃的だ」と嘆く。

棺桶や首つり縄の画像付きの脅迫状も送り付けられている。それもこれも、科学的研究を誠実に行うという「罪」を犯したせいだ。

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