一方、大会組織委員会があのイラストを問題視したのはあまりいい決断だと思わない。なにせ相手は各国とつながりのある特派員だ。この場合「ストライサンド効果」をとりわけ懸念すべき。案の定、この騒動はアメリカ、フランスなど各国で報道された。伏せたいはずの「配慮を欠く」イラストが世界に拡散されることになった。

さて、あの表紙に著作権の問題があったかどうか。「争える範囲内」ではないかと推測する。その証拠の1つに、6月27日付の朝日新聞に掲載された、もう1つの五輪エンブレム風刺イラストがある。花模様になっている五輪のマークの花びらが摘み取られているようなデザインだが、これも表現のためにエンブレムをいじっているのではないか。FCCJ会報誌が駄目なら、これも許されないはず。著作権法上で違いがないとなると、デザインが(大会組織委員会にとって)「気に障る」かどうか、が抗議の基準になる。これでは線引きが曖昧過ぎるとしか言えない。

五輪エンブレムのような有意義なものが誕生すれば、メディアはそれに乗っかって何かを表現するもの。格言にあるではないか。「模倣は最も誠実なお世辞」

NW_Tony_Laszlo.jpgトニー・ラズロ

TONY LÁSZLÓ

1960年、米ニュージャージー州生まれ。1985年から日本を拠点にジャーナリスト、講師として活動。コミックエッセー『ダーリンは外国人』(小栗左多里&トニー・ラズロ)の主人公。

<2020年8月4日号掲載>

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