では、利用者は価格の変動を利用して上手に買い物をすることができるのだろうか。答えはイエスでもありノーでもある。

コロナ危機ではパニック買いが発生し、一部商品の価格が異常に高騰するという出来事があった。これも一種のダイナミック・プライシングだが、高い買い物を強いられた消費者がいる半面、その後の値崩れによって、逆に安く買えた消費者もいる。結局は消費者と小売店の情報戦であり、正しい情報を先に得た人が勝つゲームと考えてよい。

もっとも、IT化の進展で価格変動の頻度が異様に高まっているのだとすると、有利なのは小売店側だ。両者の情報量には格差があるので、頻繁に価格をチェックできなければ、消費者がお得な買い物に利用するのは難しいだろう。

<2020年6月2日号「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集より>

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2020年6月2日号(5月25日発売)は「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集。行動経済学、オークション、ゲーム理論、ダイナミック・プライシング......生活と資産を守る経済学。不況、品不足、雇用不安はこう乗り切れ。
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日本では商品は定価で買うものという認識が強いが、定価の概念は意外と曖昧である。メーカーは値崩れを防ぐため、小売店に定価販売を強く求めてきたが、それが通用したのは、世の中が貧しく、モノを生産するメーカーの力が強かった昭和の時代までである。1970年代には流通革命を標榜する大型スーパーが、80年代には家電量販店が急成長した。こうした大規模小売店が圧倒的な調達力を背景に大幅な安値販売を行ったことから、定価販売の概念は事実上、消滅した。高い店舗コストを捻出するためコンビニだけは例外的に定価販売を続けてきたが、ここ数年で、その慣行も薄れている。

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