とはいっても、シングルマザーを取り巻く状況がシビアなものであることに変わりはないだろう。例えば彩さんも、高校を中退したのちに早い時期で妊娠・出産を経験し、20代半ばで学歴・職歴・資格のまったくない状態に置かれている。

端的に言えば、そういった女性が月額46万円を稼げる仕事は、少なくとも地方都市においては風俗以外にないということだ。

しかも高額の収入がいつまでも続くという保証はないし、ネット上の誹謗中傷や個人情報の暴露、性感染症などのリスクによって、いつ店を辞めなければならなくなるか分からない。


 多くの女性は、あくまで次のキャリア、次のステップに進むためのつなぎの仕事として、風俗を活用している。道徳的な是非論を抜きにすれば、地方都市で子育てをするシングルマザーにとって、風俗の存在が、実家の母親や行政の子育て支援制度と並ぶ第三の「社会資源」となっていることは、否定しようのない事実だ。(52ページより)

おそらく本書を読んでいなければ、地方都市のこうした現実を知ることはなかった。しかし不況が続く中、その影響がこうしたかたちで地方都市に及んでいることは、悲しいほどに確かな現実なのである。


性風俗シングルマザー:地方都市における女性と子どもの貧困

 坂爪真吾 著

 集英社新書

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[筆者]

印南敦史

1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に「ライフハッカー[日本版]」「東洋経済オンライン」「WEBRONZA」「サライ.jp」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)をはじめ、ベストセラーとなった『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。