AWSの本質は「ビッグデータ×AI」のプラットフォームであること。今ではAWSで、企業向けにブロックチェーンのサービスや宇宙に関わるビッグデータの提供も始めている。

――AWSといえば、業界2位のマイクロソフトもクラウド事業の売り上げを伸ばしている。アマゾンの躍進を恐れる小売企業を味方に付けているという報道もあったが。

(AWSを使うと全てをアマゾンに握られると小売企業が)恐れているという理由は、当てはまらないのではないか。今に始まった話ではない。

ただし、マイクロソフトはかなり追い上げてくるだろう。同社のサトヤ・ナデラCEOが数年以内にAWSを抜いてクラウドで首位になると宣言しているし、今後はプライバシーの配慮がポイントになる。

今年のCESを視察して感じたのは、アメリカでプライバシーが相当言われるようになってきていること。マイクロソフトも昨年、データを二次利用しない方針を明確にしている。だが、アマゾンにとってデータは生命線だ。プライバシーに配慮します、データを利用しませんなどと、ベゾスは絶対に言わないだろう。となれば、プライバシーを配慮する企業の評価が高まり、マイクロソフトに追い風が吹く可能性はある。

実際、シアトルで会った先のアマゾン社員も、AWSの競合はどこかと聞くと「マイクロソフトだ」と答えた。

――アマゾンのEC事業のほうは、何か懸念要素はあるか。

経済全体がスローダウンする可能性など、当たり前に議論されているポイントもあるが、強いて言うなら、リアル小売企業による「反撃」の動きがある。アマゾンへの逆風とまでは言えないかもしれないが。

アマゾンがホールフーズ・マーケットを買収して、それからどうなったか。「アマゾン・エフェクト」の脅威が増したという見方もあるが、一方で、アマゾンといえどもリアル店舗が必要だったという見方もできる。Retailer(小売企業)に対するE-Tailer(EC企業)という用語があるが、最近はNew E-Tailerという概念が使われ始めている。リアル店舗を始めたEC企業のことだ。

ネットで買った商品を顧客が受け取れるロッカーを設置し、「ラストワンマイル(最後の配送拠点から顧客に配達する段階)」の問題解決に使うのだ。アマゾンがホールフーズをその拠点にし、一方でウォルマートも自社ECのラストワンマイルに店舗を使い始めている。ただ、1月の訪米で見て回ったが、アマゾン以外の企業のロッカーはあまり使われていない印象を持った。やはりECが定着した企業でないと、この先どれだけ広がるかは分からない。

ECは簡単ではない。リアル店舗のよさも確かに見直されてきている。手放しでアマゾンがすごいと称賛し続けても意味はない。

※この記事は本誌「徹底解剖 アマゾン・エフェクト」特集の1記事の拡大版。詳しくは2019年3月5日号(2月26日発売)をご覧ください。
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