Yasmeen Abutaleb Emma Rumney Chris Prentice

[ワシントン 26日 ロイター] - 米食品医薬品局(FDA)が電子たばこやニコチンパウチ(唇と歯茎の間に挟んでニコチンを摂取する製品)に関する規制を新たに緩和したことで、今後数週間から数カ月のうちに、こうした製品が今後さらに数百種類、市場に出回る可能性がある。事情に詳しいトランプ政権の当局者と元当局者3人が明らかにした。

FDAは5月初め、未承認の電子たばこの販売についても、一定の基準を満たす申請が行われている場合には、「執行上の裁量」により厳しい取り締まりを見送る方針を示した。これまでは若者の電子たばこ利用を抑える目的などから、販売前の事前承認を義務付けていた。

トランプ政権による今回の急速な方針転換は、マカリーFDA長官の辞任の数日前に打ち出された。元FDAたばこ部門トップ2人によると、本来であれば大規模な制度変更に伴って実施される数カ月間のパブリックコメント(意見公募手続き)を経ておらず、公衆衛生や消費者への影響を巡り懸念が高まっている。

事情説明を受けた当局者の1人によると、たばこ業界幹部は規制変更を求めてトランプ大統領に対して積極的な働きかけを展開していた。今月初めに開かれた会合では、FDAのこれまでの方針が主に中国製の電子たばこによる大規模な違法市場を生み出してしまったと主張したという。

この当局者によると、新たな方針によって直ちに恩恵を受ける可能性のある製品は100ないし200種類に上る。FDAの審査手続きに詳しい別の関係者は、現在およそ1000件の申請が「科学的審査」の段階にあり、新方針の適用対象として検討されるのに十分なデータを既に提出していると明らかにした。

恩恵を受ける可能性のある製品数が報じられたのは今回が初めてとみられる。

FDAたばこ製品センターの元責任者で、現在は禁煙推進団体「キャンペーン・フォー・タバコフリー・キッズ」に在籍するブライアン・キング氏は今回の政策変更について、「業界側が長年求めてきた内容そのものだ」と指摘した。同団体は、新指針によって風味付き電子たばこの合法的な販売が拡大し、子どもらを危険にさらすことになると警告している。

FDAのデータによると、昨年電子たばこを使用したと認めた米国の10代は約140万人と全体の約5%に相当した。人数自体は2019年に記録した600万人超のピークから減少している。

一方、ハーバード大学公衆衛生大学院のボーン・リーズ氏は「もちろん若者の手にニコチンが渡らないようにする必要はある。しかし喫煙する成人には代替手段も必要だ」と述べた。同氏は、たばこ業界から資金提供は受けていないとしている。

保健福祉省(HHS)のアンドリュー・ニクソン報道官は、新たな指針について「違法・未承認ニコチン製品の氾濫に対する取り締まりを強化し、より秩序ある規制市場への移行を支援するものだ」と説明。ホワイトハウスのクシュ・デサイ報道官も声明で「トランプ大統領は一貫して、禁煙を目指す米国民にとって有益だとする豊富な科学的証拠を踏まえ、電子たばこやニコチンパウチへのアクセス拡大を公約してきた」と強調。「トランプ政権の保健政策を貫く唯一の基準は『最高水準の科学』だ」と述べた。

たばこ会社や市場調査会社ユーロモニターによると、米国の電子たばこ販売の少なくとも70%は違法製品とされ、24年の市場規模は80億ドルとする試算もある。

<トランプ氏は支持つなぎ止め狙う>

トランプ氏が風味付き電子たばこに関心を示し始めたのは第1次政権時代にさかのぼる。事情に詳しい当局者3人によると、トランプ氏は今も、電子たばこが若年男性層からの支持をつなぎ止める上で重要だと考えているという。

第1次政権時代にFDA長官だったスコット・ゴットリーブ氏は、電子たばこ「ジュール」の流行によって若者の使用が急増したことを受け、カートリッジ式電子たばこの風味付き製品の大半を禁止する案を打ち出した。

トランプ氏は当初、この政策の推進を容認していた。しかしゴットリーブ氏の退任後、当時のアレックス・アザー保健福祉長官が果物風味の電子たばこを禁止したことについて、「20年大統領選に悪影響を与える」と懸念。方針を転換したと元当局者が明らかにした。

公式記録によると、24年以降、たばこ会社やたばこ業界団体はトランプ陣営やトランプ氏の就任式関連、宴会場などへ献金を行ったほか、ワシントンでの有力な人脈を通じてトランプ氏との関係強化を図ってきた。第2次トランプ政権では、メンソールたばこ禁止計画が撤回されたほか、FDA審査が迅速化され、中国製の未承認電子たばこに対する取り締まりも強化されている。

5月の会合直前には、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ傘下のレイノルズ・アメリカンが、トランプ氏系のスーパーPAC(政治活動委員会)である「MAGA Inc」に500万ドルを献金していたことが、政治資金記録で確認されている。

当局者の1人によると、たばこ業界幹部との会合後にトランプ氏はロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官に電話をかけ、同長官がFDAおよびHHS職員に方針変更を指示したという。

レイノルズはロビー活動に関するコメント要請に応じなかった。

<たばこ業界に追い風>

バークレイズのアナリスト、パラブ・ミタル氏は、今回の方針転換によって業界の売り上げが加速すると予想。フィリップ・モリス・インターナショナルは主力のニコチンパウチ「Zyn(ジン)」の新バージョン投入が見込まれ、今年の販売数が最大1200万個上積みされる可能性がある。アナリストによると、レイノルズが電子たばこブランド「Vuse(ビューズ)」の風味付き製品を投入する可能性もあるという。

業界団体「ベイバー・テクノロジー・アソシエーション」の代表、トニー・アブード氏は、加盟企業が今回の変更の恩恵を受けるかどうかは不透明だと説明。風味付き電子たばこは成人喫煙者に紙巻きたばこからの切り替えを促す一方、若者の電子たばこ使用は違法販売が存在する中でも減少していると主張した。同氏は政策決定前にホワイトハウス当局者やマカリー氏と面会していた。

FDAたばこ部門の元責任者ミッチ・ゼラー氏は、新方針の下では、成人喫煙者が十分な検証を経ていない製品を使用する恐れがあると警告した。後になって有害化学物質が危険な水準で含まれていたり、禁煙効果が限定的だったりすることが判明する可能性があるという。

ゼラー氏は「FDAに対する政治的影響力の行使は、公衆衛生にとって極めて有害であり、政府に対する国民の信頼を損なうことにもつながる」と述べた。

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