Gertrude Chavez-Dreyfuss Nandita Bose
[ニューヨーク/ワシントン 24日 ロイター] - トランプ米大統領のイランを巡る姿勢は、同大統領がほとんど制御できない力によって試されている。債券市場だ。この1週間で米国債利回りは急上昇し、米政権の高官によると、スタッフの間でガソリン価格と債券市場の行方に対する不安が強まった。現時点で最大の不安材料は燃料価格だという。
債券利回りが上がれば企業と消費者の借り入れコストが、原油価格が上がればインフレ期待が、それぞれ高まる。11月に議会中間選挙を控え、この組み合わせは政権にとって頭痛の種になりかねない。
「市場はトランプ氏に痛みを突きつけており、同氏はこの状況をどう収束させるかを見極める必要があるが、それは容易ではない」とアメリベット・セキュリティーズの金利戦略責任者、グレッグ・ファラネロ氏は指摘する。「(債券利回りは)既に、最終的に住宅ローン金利に波及し住宅市場に影響を及ぼす水準に達している」
<イランに関する発言を注視>
ポトマック・ファンド・マネジメントの経済ストラテジスト、ショーン・スナイダー氏は「政権の取り得る対応としては、より冷静な言葉で状況の緊張緩和を図ることだ」と述べ、相場は戦争終結に関するトランプ氏の発言に敏感に反応していると付け加えた。
米国債の投資家はここ数日、数週間にわたって成立の見通しが立たない米・イラン合意と、戦争の長期的な影響に焦点を当てており、10年物国債利回りは4.5パーセントを優に上回る水準に上昇した。
一方、米連邦準備理事会(FRB)高官らはインフレを抑制するため、トランプ氏が求める利下げではなく、利上げの可能性を議論している。また、上下両院で共和党がわずかな過半数を維持できるかどうかが決まる中間選挙を控え、共和党議員の一部はトランプ氏が求める支出拡大に懸念を募らせている。
国債利回りの上昇は住宅ローン、クレジットカード、企業向け融資など、経済全体の借り入れコストに直接跳ね返り、金融の安定を揺るがす恐れがある。債券投資家らは、政権は債券市場の動きに注意を払わざるを得ないと述べた。
ベセント財務長官と米政権は、利回りの高止まりは一時的なものにとどまると示唆している。
イランとの交渉が最終段階にあるというトランプ氏の発言を受け、米国債利回りは20日、急騰からやや反落した。10年物国債利回りは先週の初めには2025年1月以来の最高水準である4.69パーセントに達していた。2月28日に米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始して以来、10年債利回りは50ベーシスポイント(bp)余りも上昇している。
借り入れコストの上昇が続けば住宅需要は冷え込み、個人消費は圧迫され、最悪の場合には景気後退に向かう恐れがある。中間選挙を控えるこの時期、そのリスクは特に重大な意味を持つ可能性がある。
ジャナス・ヘンダーソンの証券化商品グローバル責任者、ジョン・カーシュナー氏は「政権ではアフォーダビリティー(住宅などの購入しやすさ)が流行語になっているが、無理もない。アフォーダビリティーは非常に多くの家計にとって切実な問題であり、金利がその大部分を左右するからだ」と話した。
最終的に和平合意が成立すれば、その影響は一過性のものかもしれない。ベセント氏は22日の週、利回りの高止まり、とりわけ長期ゾーンの利回りはイランでの戦争によるエネルギーショックが原因であり、一時的なものに過ぎないと述べた。米政権は、混乱は短期間で終わる可能性が高いとしている。
ホワイトハウスのクシュ・デサイ報道官は声明で「トランプ大統領は、イランに対する軍事作戦がもたらす一時的な市場の混乱について常に明確な姿勢を示してきた」と述べた。
デサイ氏は、政権は引き続きトランプ氏の「経済成長の加速、規制緩和、政府支出における不正削減による米国の健全財政回復という長期的な政策課題」に集中していると強調した。
<限られた選択肢>
債券市場は長年、米政府の政策を左右し得る強力な政治的力であり続けてきた。政府は財政に対する投資家の信認を維持する必要があり、信頼を失えば、借り入れコストが上昇して指導者らを圧迫する。
クリントン元大統領の顧問を務めたジェームズ・カービル氏は1990年代初頭、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に対し、生まれ変わるなら債券市場になりたい、なぜなら「誰でも威圧できるからだ」と語った。
市場参加者によると、大きな痛みをもたらす水準として政府が意識する5パーセントまで利回りが上昇したとしても、政府の対応能力と意思は限られるかもしれない。金利上昇の原因が信用への懸念ではなく、強い経済成長や根強いインフレである場合はなおさらだ。
そうした環境下で過度に介入すれば、インフレ対策に対する信頼性を損なうリスクがあり、利回り上昇の要因に拍車をかけかねない。
BNPパリバ(ロンドン)のグローバルマクロ戦略責任者、サム・リントンブラウン氏は、今回の利回り上昇は政府財政への懸念よりも、根強いインフレ、強い経済成長、地政学的緊張に結びついたエネルギー価格の高騰によって引き起こされていると指摘した。
同氏は、経済の強さを背景に利回りが上昇する場合、市場や政策担当者が問題視する可能性は低いと指摘した。実際、「利回りは上昇したが、これまでのところ株価もクレジット市場もうまく適応している」と同氏は述べた。