Patricia Zengerle

[ワシントン 23日 ロイター] - トランプ米政権は、1月に軍事力を行使してベネズエラのマドゥロ大統領を拘束し、排除した後、今度は共産党が支配するキューバへの圧力を強めている。

ベネズエラはキューバの主要な支援国だったが、キューバが「ベネズエラ2.0」にはならない可能性がある。理由は次の通りだ。

◎後継者の不在

ベネズエラでは、1月3日の電撃的な急襲で米軍がマドゥロ氏を拘束した後、当時のデルシー・ロドリゲス副大統領が実権を握り、現在は暫定大統領を務めている。

マドゥロ氏の次席にはロドリゲス氏がいたが、キューバのディアスカネル大統領には同じような人物は存在しない。キューバへの圧力を強めるために米国が刑事訴追した94歳のラウル・カストロ元国家評議会議長にも、代わりとなる人物はいない。

ノーステキサス大学の米国・中南米関係専門家、オーランド・ペレス氏は「キューバの治安機構は、あらゆる代替的な、あるいは代替となり得る権力の源泉を組織的に解体してきた」と指摘する。

さらにベネズエラには、ノーベル平和賞受賞者のマリア・コリナ・マチャドという人気のある野党指導者がいる。彼女の率いる野党は、マドゥロ氏が不正を働いたとされる2024年の大統領選挙で正当な勝者と広く見なされており、マチャド氏自身、自由な選挙のために今年帰国することを望んでいる。だがキューバにはそのような人物も見当たらない。

カストロ元議長の孫、ラウル・ロドリゲス・カストロ氏は今月、首都ハバナで米中央情報局(CIA)のラトクリフ長官と会談し、米国への協力に同意するのではないかとの憶測が浮上した。ただ、彼はキューバ政府内で正式な役職には就いておらず、カストロ一族を裏切るとも考えられていない。同氏は22日、祖父の訴追に抗議するためにハバナで行われた集会に出席した。

◎メリットとリスク

キューバは、1959年のフィデル・カストロ氏による革命以来、数十年にわたり米国の敵対者となってきた。トランプ大統領は、長年米国主導の体制転換を求めてきた南部フロリダ州の強硬派キューバ系米国人から強力な支持を受けており、彼らの故郷に変革が起きることを望んでいると明言している。

かつてキューバは、フロリダからわずか90マイル(144キロ)という米国にとって不快なほど近い場所にあり、脅威を及ぼす旧ソ連の衛星国とみなされ、最近では西半球における中国の影響力の潜在的な拠点と認識されている。ただ旧ソ連崩壊以降、ロシアの関心が他の地域に移ったこともあり、経済問題を抱えるキューバが米国に対抗する能力は弱まった。

一方で専門家は、キューバの不安定化は移民危機を引き起こす恐れがあると指摘している。キューバ国民は米国の封鎖により電力供給がほとんどない状態で生活しており、戦争や混乱が起きた場合には島を脱出することを選択する可能性があるからだ。

その上キューバ軍はベネズエラよりもイデオロギー的に強固で結束力があり、反撃に出る可能性が高いとされる。1月にマドゥロ氏の警備に当たっていた数十人のキューバ工作員がベネズエラで殺害されたが、生き残った工作員らはその急襲から米軍の作戦行動を学んだはずだ。

キューバはロシアや中国との長年の協力関係を経て、監視や情報収集活動の面でもより進んでいるともみられる。

◎キューバは米国に何をもたらすか

ベネズエラは天然資源が豊富であり、米国企業は輸出が急増しているベネズエラでの石油生産事業に参入しようと列をなしている。

これに対してキューバには同様の資源はない。国営の観光産業は、今年の急激な冷え込み以前から、価格と質の面で他のカリブ海の目的地に後れを取ってきた。こうした落ち込みは、トランプ氏の「最大限の圧力」キャンペーン、米国の封鎖、燃料を提供する国々への関税の脅しに伴う物不足によって悪化している。

国家安全保障担当補佐官も務めるルビオ米国務長官はキューバ強硬派として率直な発言を行っており、トランプ政権のキューバ政策の推進力とみなされている。

フロリダ州出身でキューバ移民の息子であるルビオ氏は、過去に大統領選挙に出馬したことがあり、再出馬が予想されている。キューバにおける大きな変化はルビオ氏の政治的野心を高める可能性があるが、米国が巨額の財政赤字に直面し、既に1日当たり数十億ドルの費用がかかると推定されるイランでの軍事作戦を展開している中での失敗は、大きなリスクを伴う。

◎法的な問題

米国がキューバとの関係を変更する能力は、1996年の「ヘルムズ・バートン法」によって制限されている。この法律は、数十年にわたる米国の禁輸措置の解除条件を、民主的に選出された政府の樹立といった特定の政治的変化と結び付けた内容だ。

トランプ氏は、マドゥロ氏の排除を通じてベネズエラとのビジネス関係を刷新したが、自由な選挙の計画さえ発表することなく、その政府を存続させている。

キューバにおいては、これまでのところ協力を拒否しているキューバ当局者による劇的な方針転換がない限り、法的には米国の制裁・ビジネス関係を一方的に修正することはできない。

キューバの状況はより複雑と言える。この国の経済に民間セクターが存在しないからだ。経済は、米国の制裁対象となっているキューバ軍傘下の巨大複合企業GAESAによって支配され、同社は島内の主要な高級ホテル、最大の港、最大の商業銀行、そして膨大な数のスーパーマーケット、ガソリンスタンド、送金業務を傘下に置いている。

さらにトランプ政権は、マドゥロ政権が「麻薬テロ」に関与しているとしてベネズエラへの急襲を正当化したが、キューバ当局者はそのような罪に問われておらず、むしろキューバ政府は薬物密売対策で米国と協力していると説明している。

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