Hyunjoo Jin Heekyong Yang
[ソウル 21日 ロイター] - 韓国のサムスン電子と労働組合が合意した賃金協定は、重要な譲歩を勝ち取り大規模なストライキを回避した会社側、そして巨額の賞与を得るメモリー半導体部門従業員の、双方が喜ぶウィンウィンの結果だと称賛されている。
国内従業員約4万8000人による18日間のストライキが回避されたのを好感し、サムスン株は21日に8.5%急騰して過去最高値を更新した。組合員は22日―27日に、政府の仲介による合意案への投票を行う。組合トップは、協定が批准される見通しだと述べた。
サムスンの従業員は、より規模の小さい競合企業、SKハイニックスの従業員との大きな賞与格差に激怒していた。SKハイニックスは米エヌビディアへの最先端人工知能(AI)半導体ユニットの納入でサムスンに先んじ、業績を大きく伸ばしていた。
サムスン従業員はSKハイニックスと同等か、それ以上の待遇を強く求めていた。サムスンは高額な賞与を支給するが、一人当たりの報酬はSKほど手厚くない。かつてサムスンの半導体部門で人事担当者を務め、現在は業界に関する執筆活動を行っているパク・ジュンヨン氏は「コストの観点から言えば、サムスンはSKハイニックスよりも良い合意を結んだ」と語り、サムスン側の勝利だと指摘する。
ただ同氏は、今回の条件ではサムスンが競合企業に優秀な人材を引き抜かれるリスクが残るとも付け加えた。
<賞与はSKより少額、大半が株式支給>
組合によると、サムスン半導体部門の従業員は全員、通常の賞与として年間給与の50%相当額を現金で受け取る。加えて同社は営業利益の10.5%を特別賞与として取り置き、株式の形態で支給する。
特別賞与のうち、今年は40%が半導体事業全体に分配され、残りはメモリー半導体部門の従業員への報奨に使われる。
組合筋によると、例えば基本給が8000万ウォンのメモリー半導体部門の従業員は今年、総額約6億2600万ウォン(約41万6000ドル)の賞与を受け取る見込みだ。
ロイターの計算によると、SKハイニックスは今年の利益が250兆ウォンに達すれば従業員に7億ウォン以上の賞与を支給する予定であり、これに比べるとサムスンは見劣りする。また情報筋によると、SKの従業員はボーナスを現金か株式のいずれかで受け取ることができる。
NH投資証券のシニアアナリスト、リュウ・ヨンホ氏は、サムスンの賃金協定について「直接的な現金の流出を回避しつつ、追加の株式希薄化を引き起こさずに株価を支えるのにも役立つ」と分析する。
サムスンの特別賞与は10年間継続されるが、同社が一定の利益目標を達成することが条件だ。アナリストらによると、この条件は業界の不振期にコストをより適切に管理する一助となる可能性がある。SKハイニックスは同様の条件を設けていない。
JPモルガンの試算では、サムスンの今年の総業績給は営業利益の12%相当と、組合側が求めていた15%より少ない。
<安堵と不満>
労使合意は韓国全土におおむね安堵感をもたらした。サムスンは韓国の輸出の約4分の1を担っており、スト決行となれば韓国経済に甚大な打撃を与え、世界の半導体サプライチェーンを揺るがす見通しだったためだ。
しかし今回の労使紛争では、AIブームがもたらした利益の分配方法を巡る深い溝も露呈した。メモリー半導体がAIデータセンターに不可欠となったことでサムスン株は過去1年間で5倍以上に急騰しており、関連利益は決して馬鹿にならない。
メモリー半導体部門の従業員は巨額のボーナスを手にするが、サムスンの他の半導体部門の従業員が受け取る額はそれよりもはるかに少ない。
21日、ソウル南西部にあるサムスンの広大な半導体工場では、誰もが喜んでいるわけではなかった。
ある受託製造エンジニアは「社内を見ると、メモリー部門はこの合意に納得しているようだが、それ以外のチームは不満を示している。辞めたい人たちは、すでに去り始めているようだ」と打ち明けた。
また一部の個人株主グループは、合意内容の一部は株主総会の承認がなければ違法だと主張し、協定が批准されれば提訴すると表明した。