Lewis Krauskopf
[ニューヨーク 13日 ロイター] - 半導体企業の株価が驚異的な上昇を見せ、米株式相場を押し上げるけん引役となっている。一方、目を見張るような上昇幅には過熱懸念が出ており、一部の投資家に対して調整局面に備えるよう促している。
2022年終盤に始まった株式市場の強気相場の大半で、半導体大手エヌビディアが人工知能(AI)関連銘柄の象徴となっていた。だが、今回の局面では、AI市場への新たな熱狂の波が半導体セクター全体を押し上げている。データセンターや他のAI関連インフラに対する巨額の設備投資が半導体需要を押し上げたことで、その熱気は今年になって業界全体に広がった。
しかし、株価指数に占める半導体セクターの比重が高まっているため、半導体セクターに何らかの問題が生じればより広範な影響が及ぶ可能性がある。
モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのシニア投資ストラテジスト、スティーブ・エドワーズ氏は「これはある意味で完璧な組み合わせだ。ファンダメンタルズの材料が十分にあり、テクニカルの材料も非常に力強い」とし、「これらの二つの要素が相まって、非常に熱狂的で楽観的な投資家層を生み出し、それが現在の勢いを後押ししている」と解説した。
フィラデルフィア半導体株指数は今年3月下旬以降に64%上昇した。これに対し、米株式市場の主要指標であるS&P総合500種株価指数の同じ期間の上昇率は17%弱にとどまっている。この期間に半導体大手マイクロン・テクノロジーとアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価はともに2倍超になり、インテルは3倍弱となった。
しかしながら、この分野に楽観的な見方をしている投資家らさえもが過熱した相場が冷え込むことに備えている。現在の半導体市場の動向を、1999年から2000年にかけてのITバブルと重ね合わせる見方もある。
南部バージニア州シャーロッツビルのチェイス・インベストメント・カウンシルのピーター・タズ社長は「放物線的な値動きが見られる時には常に、熱狂は行き過ぎではないかと自問しなければならない」と指摘する。同社は11日に保有するクアルコム株を売却したが、AMDやエヌビディアなどの株式は引き続き保有している。
フィラデルフィア半導体株指数は12日に反落し、前日比3%安で取引を終えた。一部の投資家は半導体セクターに対してより弱気な姿勢になっている。
<半導体株が市場をけん引>
半導体株のパフォーマンスが好調なことは、市場全体が半導体セクターへの依存度を高めていることを意味する。S&P総合500種株価指数に含まれる計19の半導体および半導体製造装置の関連銘柄は、11日時点で全体の18%を占めていた。
AIの普及はサンディスクや、ウェスタンデジタルといったメモリーやストレージを専門とするテクノロジー企業の業績も後押ししている。ジョーンズトレーディングのチーフ・マーケット・ストラテジスト、マイケル・オローク氏は、S&P総合500種株価指数の2026年に入ってから上積みされた時価総額約5兆1000億ドル(約800兆7000億円)のうち、70%は半導体株およびメモリー関連株の上昇によるものだと解説した。
一方で市場アナリストらは、弱気な兆候が出ていると指摘している。ベスポーク・インベストメント・グループによると、S&P総合500種株価指数は今週に過去最高値を更新したものの、構成銘柄のうち50日移動平均線を上回っていたのは半分強にとどまった。
オローク氏は「半導体セクターは現在、S&P総合500種株価指数で非常に大きな比重を占めており、いかなる調整や失望感も市場全体にとってリスク要因となる」と指摘する。
半導体は多くの電子機器にとって極めて重要な部品であり、米株式市場では半導体の株価動向を経済の健全性や市場全体の方向性を示す指標として捉えることがよくある。
半導体株は最近ではAIブームの中心的存在となっている。半導体株への投資比率を引き上げている西部サンフランシスコのベーカーアベニュー・ウェルス・マネジメントのチーフストラテジスト、キング・リップ氏は「AIインフラの構築、計算能力の需要、ネットワークの需要が半導体株ブームの背景だ」と強調。その上で「これは数年にわたる設備投資局面であり、半導体関連に非常に期待している」と語った。
調査会社ガートナーは2026年の世界の半導体売上高が前年比64%増の1兆3000億ドルに達すると予想している。LSEGデータ&アナリティクスの利益調査責任者タジンダー・ディロン氏によると、S&P総合500種株価指数に組み入れられている半導体および半導体製造装置メーカーの26年の利益は前年比で95%増えると予想され、今年元日時点の62%増から見通しが切り上がっている。
ウェルス・エンハンスメントのシニア投資ストラテジスト、アヤコ・ヨシオカ氏は「こうした企業の多くをけん引しているファンダメンタルズを考えると、依然として上昇余地があると思う」と言及。同社の投資先にはAMDやマイクロンが含まれているものの、ヨシオカ氏は半導体セクターに一服感が出る可能性もあるとの見方を示した。
<過熱の兆候か>
足元では半導体株相場が過熱しつつある兆候が出ている。注目度の高いフィラデルフィア半導体株指数のテクニカル指標の一つである週足の相対力指数(RSI)は8日に85.5を付け、ITバブルのピークだった2000年3月以降で最も「買われ過ぎ」の状態を示した。
モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのエドワーズ氏は「買われ過ぎの状態になると、その状態がしばらく続くことがある」とし、「テクニカル指標は反転する傾向があり、残念ながらそれが激しい値動きを引き起こすこともある」と指摘した。
AIブームが少しでも弱まれば、半導体株に影響する可能性がある。
クレセット・キャピタルのジャック・アブリン最高投資責任者(CIO)は、戦略的ポートフォリオの一部として半導体株を重視してきたものの、保有銘柄が悪化する兆候がないかどうかを注視していると説明。その上で「たとえ株価が割高になったとしても、ポジティブな勢いが続いている限りは保有し続ける」と語った。