経済、人権問題で中国と一線を画す
ウイグル族支援団体などによると、マレーシアのみならず海外で拘束されたウイグル族が中国に強制送還された場合、収監されて拷問などの厳しい措置が待ち構えており、行方不明になったり殺害されたりする事例も多く報告されているという。
マハティール首相が自らの後継首相として内外に明らかにしているアンワル・イブラヒム元副首相は米メディアのブルームバーグとのインタビューで「中国に対して公式に少数イスラム教徒の問題、秘密収容施設の問題などで協議を呼びかけているが、中国側は内政問題であるとの立場を崩さず、協議に応じる姿勢を示していない」ことを明らかにしている。
マレーシアはイスラム教国で中国新疆ウイグル自治区のイスラム教徒への人権弾圧、差別問題に関してはとりわけ関心が強い。さらにミャンマーの少数イスラム教徒のロヒンギャ族に対して「国軍による民族浄化」と国際社会が指摘する人権侵害についても強い関心とロヒンギャ族支持を表明するなど、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でもインドネシアと並んで存在感を示してきた。
特に対中国ではカンボジアやラオスなどのASEAN加盟国が親中国路線を続ける中、マハティール政権は「中国の一帯一路政策は所詮中国の利益最優先である」と見抜き、ナジブ政権下で進められた中国関連の巨大プロジェクトなどの見直し、中止を次々と進めている。
それだけに今回のウイグル族の中国への強制送還拒否という断固としたマレーシアの姿勢は中国に対し経済だけでなく人権問題でも毅然とした態度で臨むというマハティール首相の姿勢を内外に示したものといえる。
今回の措置を受けて今後ミャンマーやラオス、タイを経由して最終的にマレーシアを目指すウイグル族が増えることも十分予想されている。
また、逆に中国国境で中国官憲による不法出国の摘発強化、さらに親中国のラオスやカンボジア、ミャンマーなどに対する中国からの「発見、拘留したウイグル族の中国への強制送還」要求がさらに強いものになる可能性も指摘されており、国際社会が解決への道筋を提示することが早急に求められている。

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