しかしアメリカの金融圧力の結果、今年1月下旬、同社はアメリカの投資会社カーライル・グループに売却することに合意した。このことが東欧を「脱ロシアエネルギー」させ、勢力図を根本から変え始めている。
売却には欧州だけではなく中東、アフリカ、中央アジア、メキシコでの事業が含まれている。筆者はこの売却を、地政的にも歴史的にも大転換と見ている。
ブルガリアには、同社のブルガス製油所というロシア産原油を精製してきた大施設が存在する。同国の国家財政の最大の貢献者で、同社の数百のガソリンスタンドも含めて数万人の雇用を支えてきた。
しかしもう、ロシアの石油エネルギーの影響下にいる必要がなくなったのだ。
トランプ大統領自身は親露的な姿勢を見せることが珍しくない。しかしトランプ政権は、ロシアの首を締めるエネルギー政策を次々と打ち出している。
イラン戦争でも、米政権はホルムズ海峡の閉鎖を予測しており、アメリカのエネルギー・軍事支配を広げるための長期戦略を描いていたのではと思う。
加えて、ブルガリアとウクライナの両首脳は、ギリシャと南東ヨーロッパの数カ国を結ぶ「垂直ガス回廊」の構築に向けて協力するとも述べた。これもアメリカ産液化天然ガス(LNG)の大きな受け皿となるだろう。
ウクライナにソ連式武器を援助
ブルガリアは地理的にはロシアから大変遠いという訳ではないが、人々はロシアにあまり脅威を感じていないと言われてきた。この点、北の隣国ルーマニアとは対照的だ。
しかし、ウクライナ戦争はやはり同国にも衝撃的だった。政府はロシアを、黒海の安全保障に直接的な脅威をもたらす攻撃的で修正主義的な勢力と見なしてきた。
そしてキーウに大量の武器を供給してきた。旧ソ連式の軍需工場が今でも多く存在しているため、ウクライナ軍が使用するソ連規格の弾薬や武器を生産できるからだ。同国は、ソ連時代からの大規模な軍産複合体を継承したために、GDPの約4%が防衛産業である。兵器工場では、損傷したウクライナの戦車の修理も行われてきた。