コーヒーショップで「口直しにお茶」

ハノイを擁する北部エリアでは、日常的にお茶をたしなむシーンをよく目にする。自宅だけではない。街の食堂にも必ず、食後にお茶を飲むためのスペース(基本的に無料)がある。コーヒーショップでさえ、口直しにお茶を出すことがあるほどだ。

三食の終わりに必ずお茶、というのもごくありふれた光景である。ひとり当たりのお茶の年間消費量は、日本人の倍以上に達するという。

とはいえ、先に述べたように、生産量の8割以上は輸出に回される。安定した品質と供給量、価格の安さがその理由だ。名もなき「汎用茶」として、世界中で親しまれてきた。

変化のきっかけについては後述するが、そんな現状を打破しようという動きの中で注目を集めるのが、北部の山岳地帯に自生・栽培されている古木茶だ。数千年の歴史を持つと言われ、世界の茶のルーツのひとつに考えられている。

ミン・ハイさんとモン族の女性たち
ミン・ハイさんとモン族の女性たち 写真:ブイ・タン・ビン

ハノイから北へ約320キロ、クルマで7時間ほど進む。次第に険しくなる山道の先にあるのが、中国と国境を接する最北の街、ハザンだ。そのほとんどが山岳地帯に属し、20前後の民族が暮らすとされる。

特に標高の高い北西部に暮らすモン族、ザオ族、タイ族などが代表的で、ベトナムで最多のキン族はむしろ「少数派」という人口構成のエリアだ。

標高1000~1200メートルを超えたあたりから、山脈の斜面に樹齢数十年、中には百年を優に超えるという茶の古木が姿を現した。その規模は1万8600ヘクタールにも及ぶという。

森の多様な香りを吸収し、独特の深みが生まれる