本作では、「敵」と見なされて悪意にさらされるエルファバを、アフリカにルーツを持つエリボが演じたことで、アメリカにおけるアフリカ系住民の歴史を強く喚起する。
アフリカ系男性は「暴力的で野蛮」「白人女性を襲う」などとラベリングされ、リンチなどの凄惨な暴力の対象となってきた。それが過去のものではないのは、BLM(黒人の命は大事)運動再燃の契機となったジョージ・フロイド殺害事件などにより明らかだ。
24年米大統領選討論会での「移民がペットを食べている」という、ドナルド・トランプの衝撃発言も記憶に新しい。
恣意的なラベリングは、個を匿名化し、全てを集団的属性に還元する。昨今の米移民関税執行局(ICE)の暴走もこうしたラベリングと無関係だと言い切れるだろうか。
オズは表面的には平和で幸せな国だ。しかしその実、ウィザードが虚構と恐怖で統治している。オズには、「いつの日か魔法の書グリムリーを読める救世主が現れる」という伝承があり、ウィザードは自分こそが救世主だとプロパガンダを流布している。
ほかにも、畏怖を誘う巨大な「顔」の立体像を自らの姿だと偽って見せつけたり、羽の生えた空飛ぶ猿に政権に反抗的な危険分子の監視をさせたりして、権力を握る。
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