マウスについては、16匹の妊娠期間中の体重変化とともに摂食量や活動量も調査しました。その結果、マーモセットで見られたような明確な体重減少は見られませんでしたが、胎盤形成期には妊娠に伴う摂食量と活動性の増加が一時的に抑制されることが分かりました。ただし、個体差は明確には認められませんでした。この点について、研究者らはマウスの遺伝的背景が均一であるためではないかと考察しています。
本研究の特筆すべきところは、2種類の哺乳類で複数の個体に妊娠に伴う変化を体系的かつ定量的に記述したこと、身体状態の低下という変化が見られる時期がいずれも胎盤の発達時期と一致していることを突き止めたことです。そのため、これらの動物でつわりのような症状のメカニズムや解消に関する研究が進めば、妊娠初期の胎盤形成期につわりが起こるヒトに対して応用できる可能性があります。
研究グループは今後のさらなる研究の候補として、ヒトのつわりに特徴的な症状である「嘔吐」について、マーモセットで研究を進めること(注:マウスは嘔吐しない)などを挙げています。
また、異なる種では妊娠中のホルモンの動態が異なる(たとえばヒトはhCG<ヒト絨毛性ゴナドトロピン>を産生するがマーモセットはmCG<サル絨毛性ゴナドトロピン>を産生する)ことなども考慮して、妊娠に伴う症状の生物学的基盤を解明していく予定です。
つわりは単なる体調不良ではありません。人によって症状に差がありすぎるため、家族や女性同士でも大変さを理解してもらいづらかったり、「赤ちゃんのために体調を万全にしなければならないのに思うようにいかない」と自分を責めてしまったり、治したくてもなるべく薬を飲みたくないし選択に神経を使ったりという、生理的・精神的に様々な特有の難しさがつきまといます。
本研究の発展で個人に寄り添った改善策や安全な薬が開発されることに希望を持ちたいですが、まずは妊婦のつらさに耳を傾けるところから始めたいですね。
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