シリア政府の支配下に復帰したドゥーマー市でOPCWが調査を行えば、証拠の隠滅や捏造に巻き込まれる――そう警戒するのは当然と言えば当然だ。

だが、OPCWの存在を黙殺する米英仏の姿勢は、化学兵器の廃絶や拡散防止に向けた国際的な枠組みをないがしろにした行為であり、調査で自らに不利な真実が暴かれることを嫌っていると勘ぐられても仕方がない。

事実、アサド政権と一貫して共闘態勢を敷くヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長は15日のテレビ演説で、「米英仏のシリア攻撃はOPCWが真実を明かす前に実行された」と批判した。

攻撃は何をもたらすのか?

そして第3の"謎"――今回の攻撃にいかなる効果があるのか、である。その答えは、トランプ政権が攻撃そのものを目的化せざるを得ない政策を打ってきたことを踏まえることで導出される。

トランプ政権にとって、シリアに対する昨年のミサイル攻撃は、アサド政権による化学兵器使用を「レッド・ライン」としつつも軍事介入に踏み切れなかったバラク・オバマ前米政権との違いを示すこと、あるいは核・ミサイル開発を進める北朝鮮を牽制することが真の狙いだったと解釈されることが多い。

その是非はともかく、こうした認識が定着しているなか、トランプ政権がもし今回の攻撃を見送っていたら、これまで強く非難してきたオバマ前政権と同じとみなされ、北朝鮮を再び増長させていたかもしれない。

有言実行の男だと誇示すること、おそらくそれが攻撃の主目的であり、その限りにおいて、シリアで具体的な戦果が得られるか否か、さらには攻撃の根拠が妥当か否かは大きな問題ではないのだ。

だが、シリアを軽んじる姿勢は、トランプ政権のシリア政策において実は首尾一貫したものだ。トランプ大統領が攻撃の2週間前の3月29日、中西部オハイオ州リッチフィールドでの演説で、「米国はシリアからすぐに出て行くだろう」と述べたことは記憶に新しい。

また、イスラーム国との戦いに注力するという基本方針のもと、アル=カーイダ系組織に「ハイジャック」されて久しいシリアの反体制派への支援を打ち切っており、ロシアとともに共同議長国であるはずのジュネーブでの和平協議でも積極的役割を果たしていない。

トランプ政権は、イスラーム国が事実上壊滅したはずのシリアで、西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)の「テロとの戦い」を支援するとして、基地を維持し、部隊を駐留させているに過ぎない。

米軍の早期撤退は、シリア国内に権力の真空を作り出し、イスラーム国の復権をもたらしかねないと懸念する国防総省や軍の説得によって撤回されたようだ。だが、トランプ大統領がシリアから手を引きたいと考えていることは事実だ。

今回の米英仏の攻撃に対して、多くのシリア人は、その政治的立場にかかわらず、異を唱え、反感を改めて強めている。

米国の庇護を受けるロジャヴァでさえ支持を表明せず、その支配下で暮らす人々は沈黙を続けている(あるいは沈黙を余儀なくされている)。米国への同調が侵略の是認を意味するからだ。シリアで米国の攻撃に期待を寄せたのは、アル=カーイダの系譜を汲むシャーム解放委員会ぐらいだ。

シリア国外でも状況はほぼ同じだ。アラブ連盟首脳会議が15日、サウジアラビアのダーランで開幕したが、基調演説を行ったサルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズ国王は、自らに反米感情の矛先が向くのを避けるためか、攻撃について言及しなかった。シリアに比較的近い立場のイラク、アルジェリア、エジプトは外務省や大統領府を通じて、予め異議を唱えた。

アサド政権は非道だ。だが、その事実を差し置いても、米英仏の攻撃を是認する雰囲気はシリアにはほとんどない。「独裁」と「侵略」という不義が錯綜するこうした状況は、アサド政権が米英仏の覇権主義への抵抗者を自負し、自らの非道を包み隠す余地を与えてしまう。一方、トランプ政権にとって、シリア人からいくら嫌われても、それは撤退の機運を高めるだけで、損した気分にはならないだろう。

こうした奇妙な利害の一致ゆえに、米英仏の攻撃は、SNSの炎上のように現状に何の変化ももたらさないまま、一過性のものとして終わったと言えるかも知れない。