<日本のパールハーバー攻撃から76年。米コロンビア大学のキャロル・グラック教授が問う「戦争の記憶」の語られ方。本誌2017年12月12日号「戦争の物語」特集より>
「戦争の記憶」をめぐる争いに、どうしたら終止符を打つことができるのだろう。
昨年11月末、米サンフランシスコ市のエドウィン・リー市長は中国系アメリカ人らの団体が設置した「慰安婦像」の寄贈受け入れを承認した。これを受け、大阪市の吉村洋文市長は同市との姉妹都市関係を解消すると宣言。こうした動きだけではなく、日中、日韓の間では侵略戦争や南京虐殺などをめぐる論争が時折再燃する。
一方で、日本とアメリカの「戦争の記憶」には、2016年に新しいページが加わった。5月にバラク・オバマ米大統領が現職の米大統領として初めて被爆地の広島を訪れ、12月には安倍晋三首相とオバマがそろってパールハーバーを訪問したのだ。この象徴的な出来事は、2国間の「和解」を印象付けた。
なぜ日韓・日中は争い続け、日米は和解へと向かうことができたのか。アメリカは広島・長崎への原爆投下について、日本は真珠湾攻撃について、互いに謝罪をしたことはない。それでも今日の関係を築くことができたのは、日米同盟だけが理由ではないはずだ。
――小暮聡子(ニューヨーク支局)
【グラック教授】 この特別講義のテーマは、別々の場所から集まった多様なバックグラウンドの学生たちと、第二次世界大戦の「歴史」と「記憶」について話し合うことです。全部で4回に分けて行われ、今日はその第1回目です。この講義は「授業」ではなく皆さんとの「対話」形式で行います。
12月7日は、真珠湾攻撃から76周年です。今日は「パールハーバー」を題材に、第二次世界大戦の「公的記憶(public memory)」もしくは「共通の記憶」について、皆さんが考えていることや知っていることと、私が考えていることや知っていることを話していきましょう。
まず、この質問から始めたいと思います。「パールハーバー」と聞いて、思い浮かべることは何でしょうか。(グラック教授の右手の学生から、反時計回りに答えていく)
【ユウコ】 日本による米軍基地への攻撃。
【ニック】 奇襲攻撃と、諜報活動の失態。
【トニー】 ベン・アフレック(主演の映画『パール・ハーバー』、01年)。
【一同】 (笑)
【グラック教授】 そうですよね、分かります。
【トム】 アメリカが第二次世界大戦に参戦したきっかけ。
【ミシェル】 多くの犠牲者。
【スティーブン】 僕も同じように映画を思い浮かべました。
【グラック教授】 いいですね、そういう答えを知りたいので。あの映画を見に行ったのは彼とあなたと、私くらいのようですし。では、次の方は?
【ヒョンスー(仮名)】 ハワイの日本人コミュニティー。
【ユカ】 日本の外交上の失態。
【ディラン】 アメリカの英雄主義。
【トモコ】 日本人として謝らなければならないこと。
【インニャン】 私も、多くの犠牲者、ですね。
【スコット】 奇襲攻撃、というより「だまし討ち」とよく聞きます。
【グラック教授】 それはあなたが思っていることですか?
【スコット】 そうです。
【グラック教授】 分かりました。歴史の教科書がどう書いているかではなくて、あなたが何を連想するかを聞いているので。では、次?
【スペンサー】 アメリカの愛国心。