益子体制の下、三菱自は14年3月末に総額6000億円規模の優先株を処理、14年3月期に16年ぶりに普通株の復配を果たすなど、会社立て直しへ自主的な改革態勢を整えた。

 さらに、同社は12年のオランダ工場閉鎖、15年の米国生産撤退の決定やフィリピン新工場稼働、インドネシアの工場計画を発表するなど相次ぎ新施策を打ち出した。SUV(スポーツ型多目的車)や電動車両への強化なども推進し、日産側に三菱自を再認識する機運が高まったという。

三菱のブランド力

 三菱自への出資で日産が享受できる恩恵は多岐にわたるが、とりわけ大きな魅力は海外での三菱ブランドの力だ。東南アジア、オセアニアなどでは「多くの人が『三菱』と言えば電機でも銀行でも重工でもなく、『自動車』を思い浮かべる」(海外に工場を持つ車部品メーカー役員)。特にインドネシアやタイでは、SUVなどを含む商用車市場では三菱自がシェアもブランド力も日産を上回る。

 日産にとって「三菱自のアジアの基盤を生かせるだけでなく、商事や銀行など三菱グループとも緊密になれるのがメリット。特に商事が持つアジアでのネットワークは魅力的」とグループ銀行の幹部は話す。

 資金調達面でも日産にはプラスだ。「芙蓉グループの日産はみずほがメーンだったが、ゴーン氏が社長になり、その形は崩れた。すでに(三菱グループの)銀行との取引はかなり増えているが、今回の出資でその距離はさらに縮まる」と同幹部は予想する。

「下駄を履くまでわからない」

 しかし、日産が三菱自を傘下に収めるためのデューデリジェンス(資産査定)は今後数か月かかるとみられ、その結果は未知数だ。両社は来週、提携の正式契約を結び、年内にすべての手続きを完了する予定だが、事がうまく進むかは「下駄を履くまでわからない」と三菱グループのある首脳は慎重な見方を隠さない。

 国内販売はマイナスからの立て直しとなり、顧客補償、販売店や部品メーカーへの対応、不正問題の原因究明と再発防止策など三菱自は早期の課題解決が必要だ。そして日産主導で意識・風土改革を進め、閉鎖的で不正を繰り返す体質から脱却できて初めて、両社の提携はスタート地点に立つ。

 日産側には、三菱との協業を強引に進めようという気配はない。関係者によれば、ゴーン氏は「三菱に対して慇懃(いんぎん)無礼にならないよう気をつけろ」という指示を出している。かつてルノーが日産に出資した際に学んだ苦い教訓からだ。

 日産買収の当初、ルノーは日産の村山工場を閉鎖、さらに購買・調達のやり方をルノーに合わせるよう強要した。だが、日産側の共感を得られず、結果的に事はうまく運ばなかったという。関係者は「ゴーン氏は途中で方針を変え、いったん白紙に戻し、日産の共感を得られるような改革のペースにした。時間はかかったが、結局はそのほうがうまく協業を実現できた」と指摘している。

 (白木真紀、久保信博、布施太郎、浦中大我 編集:北松克朗)

[東京 22日 ロイター]
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