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『欲望』 BLOOMSBURY

ところが実際は、書き手の多くは自分のファンタジーについてパートナーに話したことがなかったり、欲望を抱くことに罪悪感を感じていた。

アンダーソンも匿名で自分のファンタジーを投稿している。具体的な言及は避けたが、「特定の言葉を」書くのは本当に大変だったと彼女は言う。「頭の中で口に出すことはできるのに、書き出すと何だかもっと汚く感じられて」

ハンドルを取り戻す機会

性的ファンタジーを形にすることで、失われるものもあるのではないだろうか。だがアンダーソンはこう語った。

「自分自身に正直であることに、そして(ファンタジーを他者に)語ることに慣れることができれば、人生の他の分野にも影響は及ぶと思う。それは多少なりとも自分を見つめ直すことだから。『私は欲しいもの、必要なものをどこかで手に入れつつあるのだろうか? 思うとおりの人生を送れているのだろうか?』と自問するようになる」

またアンダーソンは性的ファンタジーを、それぞれが主体性を持って行う創造的な活動と捉えるようになったという。「私たちは監督でありデザイナーであり、細かな調整も行う。場面を設定し、そこで起きること全て、誰が登場するのかも含めて思うとおりに動かすことができる」

俳優にとって──特にアンダーソンのように、自身とは無関係に他人にとっての「性」を具現化した存在として見られるという経験をしてきた人にとっては特に──『欲望』のような本の編者となることは、自分の車のハンドルを取り戻すようなことに違いない。

©2024 The Slate Group

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