だがポートマンが常に冷静だったジャクリーン・ケネディを型どおり再現しているのに対し、スチュワート演じるダイアナは危うげで不完全だがリアルだ。スチュワートは超有名人を演じるこつを確実に押さえている。完璧な上流階級のアクセント、猫背気味のところや子供っぽい歩き方、相手を上目遣いで見る癖。それでも物まねの域を超えているのはダイアナの混乱した内面を掘り下げているからだ。

本作でのダイアナの自滅的な選択の多くは、計算ずくのささやかな反抗だ。女王夫妻や王室の人々を混乱させ、当惑させ、いら立たせようとする。スタイリストが選んだ服を着替え、夜中に城内の食品貯蔵室をあさり、「独りにして。マスターベーションしたいの」と言ってメイドを追い払う。スチュワートの素晴らしい演技(本作を成立させている唯一かつ十分すぎる理由)がピークに達する瞬間だ。

彼女もダイアナ同様、10年間、批判的な世間の目のないところで自分は何者かを探り続けてきた。ただし悲運のプリンセスと違って、乗り越える道を見つけたのだ。

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SPENCER

スペンサー ダイアナの決意

監督/パブロ・ラライン

主演/クリステン・スチュワート

日本公開は10月14日

スチュワート演じるリアルなダイアナ像『スペンサー』予告編映像