『ザ・チェア』が大学の現実を正しく描いている点がもう1つある。右派は大学を進歩派の巣窟のように言うけれど、現実の大学は保守的な体質がこびりついた組織なのだ。古いやり方を維持するために、既存のヒエラルキーや構造的差別を温存しようとする組織では、教員も学生も尊重されない。

ジユンもそうした立場を実感しているようだ。ある講義で、20世紀アメリカの詩人でフェミニストのオードリー・ロードの言葉をじっくりかみ締めるよう学生たちに言う。「主人の道具が主人の家を壊すことはできない」という言葉である。

ジユンは、自分が2つの根本的に相いれないことを求められていることに気付く。1つは、自分自身と学科の人たちを守ること。もう1つは、自分を決して受け入れないアカデミズムの世界と学科を守ることだ。

アメリカの名門大学で有色人種の女性が学科長を務めることは、かくも難しいことなのだ。

©2021 The Slate Group

【関連記事】