とはいえ、まだ対策は十分と言えないだろう。塩田も高橋も、現時点では他の多くのSNSに比べ、安全対策が「緩い」ことを指摘する。

高橋によれば、かつて「出会い系の温床」と批判されたグリーやモバゲーでは、未成年のユーザーは自分の年齢の2歳上~2歳下の年齢の人としかメッセージをやり取りできない。子供を狙う大人の「餌食」にならないようにするための措置だ。また、電話番号やメールアドレスをメッセージで送れないようにするといった対策もしているという。

LINEも対策を進めており、対応が速くなっている。例えば、誰でも閲覧できるタイムライン欄に問題のある投稿がなされると「比較的すぐに消される」ようだ。

保護者自身が無防備にSNSを使っていないか

そもそもTikTokは、生まれたときからSNSがあるような世代にとって、あまりによく出来た「楽しくて簡単な」アプリだ。

素敵な場所に行く必要も、写真映えするスイーツを食べる必要も、友達や恋人がいる必要もない。自宅で独りで撮影できるため、その気になれば誰でも投稿ができる。おまけに、フォロワーが少なくても「いいね」をもらいやすい仕組みになっており、多感な10代の承認欲求が満たされやすい。「危ないからやめろ」と言っても、彼らは聞く耳を持たないのだ(TikTokがなぜこれほど支持されているか、その分析は本誌「TikTokの衝撃」特集をご覧いただきたい)。

だからこそ大人たちは、もっと真摯に向き合なければならない。バイトダンスにはさらなる対策が求められるが、保護者と学校もそれは同様だ。

保護者自身が無防備な写真や動画をSNSに挙げていないだろうか。学校は子供たちにネットリテラシーをきちんと教えられているだろうか。

一部の保護者はまず、自らの行動を顧みるべきだろう。そして、もし子供がTikTokをどうしてもやりたいと言ってきたら、頭ごなしに「ダメ」と言うよりも「親が管理してその範囲でやらせるほうがいい」と、高橋は助言する。

「父管理」とプロフィール欄に書かれた、フォロワー数1位のひなたちゃんのようにだ。投稿する動画の内容も、届いたメッセージも、親がしっかり確認する。中学生以上になるとそこまでの管理は難しいかもしれないが、親に隠れてやる子供は、トラブルに巻き込まれたときも親に話さないかもしれない。

学校現場でもさらなる「情報モラル」教育が必要だろう。塩田はLINEと共同研究を行い、その成果として開発された「SNS東京ノート」という教材が昨年、東京都の全ての小中高校に配布された。だが、この情報モラル教育に関しては、まだ地域や学校、教師によって差があるのが実態だ。現役の小中学校教師に聞いても、TikTokがどういうものかよく知らないという人は少なくない。

変なことを言われたら無視する、初めてやり取りする人にはこんなスタンプを送らないといった、ネット上のコミュニケーションスキルが「小学生にはない」と塩田は言う。小学生にそこまで求めるのは酷なようにも思えるが、「使うのであれば、そういうスキルを身に付けなければいけない」。

必要なのは、子供たちの楽しみを奪うことではなく、安全に楽しめるよう補助してあげること。TikTokの時代になり、ネットリテラシーの重要性はますます増している。

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