圧巻は世界の喫煙具が展示された「世界のたばこ文化」エリアだ(冒頭の写真)。豪奢な装飾が施されたパイプ文化が花咲いたヨーロッパをはじめ、イスラム圏特有の喫煙具である水パイプ。そして、戦いか和平かを決める部族会議での重要な儀式に欠かせなかった「平和のパイプ」や、部族の長の権威を誇示するための斧を象った「トマホークパイプ」と、単なる嗜好品には留まらないネイティブ・アメリカンのパイプなど、世界各地の文化が反映され独特の発展を遂げた喫煙具の数々が目を楽しませる。

「なかでも貴重なのは、18世紀前半頃よりヨーロッパで作られ始めた、繊細で優美な彫刻が施されたメアシャム(海泡石)製のパイプ。1873年のウィーン万博に出品された文化価値の高いパイプも展示している」(袰地氏)。

 ユニークなのは「近現代のたばこ文化」エリアに設けられた「たばこメディアウォール」だろう。1898年から現代までの日本のたばこのパッケージやポスターなどが掲示されているが、国威を発揚する戦時下のものから「今日も元気だ たばこがうまい!」といった伝説の名コピー、さらには、近年の環境保護に配慮したポスターなど、それぞれに時代が反映されており興味深い。

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「たばこメディアウォール」の下部には、インタラクティブなデジタルライブラリーが。陳列棚内のたばこのパッケージをタッチすると、モニターにその銘柄の情報やポスターなどが表示される

異彩を放つ岩塩製の「キンガ姫」の像

 一方、塩エリアも多彩な展示を行っている。目を引くのが、ポーランドの巨大地下岩塩採掘場「ヴィエリチカ岩塩坑」に祀られる「聖キンガ像」をモチーフにした彫刻だ。岩塩層発見のきっかけとなった、ハンガリー王女でポーランドに嫁いだキンガ姫がモデルだという。

「特別に許可されたヴィエリチカ産の岩塩を使用し、現地の彫刻家や職人により制作されている」(袰地氏)と、実物とは異なるものの、いわば「2体目の本物」。なるほど、その滑らかでいて所々で光を放つ岩塩特有の質感には、どこか神々しさすら感じさせる。

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聖キンガ像。像だけでなく、像を納めた祠や床、頭上のシャンデリアもすべて岩塩で作られたとのこと

 また、ウユニ塩湖で切り出された湖塩や大粒の気泡が重なりあったような死海の塩、さらにはメキシコの天日塩に宝石を思わせるイランの岩塩など、世界中から集められた塩の数々。そして、日本の沿岸地で古来より行われてきた入浜式塩田のジオラマや、石川県珠洲市の仁江海岸で揚浜による塩作りを続ける角花家で実際に使われていた釜屋(移築復元)など、興味深い展示が続く。

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角花家で実際に使われていた釜屋の移築復元。現在、世界で1年間に作られる塩は約2億8000万トンだが、その多くは岩塩や塩湖など海水以外の塩資源から作られる。日本にはそうした資源がなく、海水からこうした手法により塩を作ってきた
豊富な浮世絵コレクション