若いフランス人のカップルがやってきて道を訊いてきた。そのとき一本の篠笛を布の笛袋に仕舞い、もう一本の篠笛を袋から出そうとしていたのだが、彼は驚いて言った。
「KATANAか?」
KATANAという発音に驚いて、彼を見かえして返事をする。
「いや違う。......竹の横笛だ」
彼はまじまじと篠笛をみている。
「音が出せるのか? 聴かせて欲しい」
少し考えてから「竹田の子守唄」を吹き始めた。「守もいやがる、ぼんからさきにゃ、雪もちらつくし、子も泣くし......」という歌詞の、アニメの主題歌にもなった歌だ。するとタバコを吸いながらみていた彼女のほうが歩み寄り、篠笛の演奏のすぐ隣で踊り始めたのだ。
間違いなく知らない曲だろうし、テンポがゆっくりとした曲でふつうは踊れる曲ではない。だが彼女は音楽にあわせ、からだを魅惑的にしならせて踊った。かつてお城であった森のなかで素晴らしい踊りを披露した。
このフランスのサン・クルーの森で3人が自由であったこと、禁止も強制もなかったこと、そうした状況がこうした場面を生んだのだろう、と思いかえしている。
※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら。

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