
ジューシーで柔らかいステーキは、大豆タンパク、菜種油、米粉、豆粉、スパイスなどで作られ、ビーツ(赤紫色の根菜)の濃縮物で色付けされ、本物の牛肉のようで、食欲をそそられた。くせがなく、おいしかった。タンドーリ・チキンも鶏肉のような食感で、スパイスの風味も筆者の好みだった。一方、ケバブは口に入れてしばらくは本物の肉のようだったが、噛み続けると徐々に豆の香りが感じられ、また、少し辛過ぎたこともあり、リピートはしないと思った。
全体的には、おいしい代替肉だった。プランテッドの公式サイトで口コミの評価がとても高いのも納得した。
スイス連邦最高裁判所が、パッケージの「チキン」の表示を禁止
絶好調ともいえるプランテッドだが、5月に、製品名に関して少し驚くニュースが国内メディアを賑わせた。スイスの連邦最高裁判所が、植物由来の代替肉のパッケージに「チキン」「ポーク」といった動物種名を使用してはならないとの判決を下したのだ。ただし、「ステーキ」や「フィレ」といった名称は表示できる。
この騒動は、食品や消費財の安全性を検査するチューリヒの州立研究所が、プランテッドに対し「栽培した鶏肉」「鶏肉のような」といった用語の使用を禁止したことに端を発している。下級裁判所は研究所の決定を支持した。
プランテッドは、チューリヒ行政裁判所(州裁判所)に控訴し、「90%以上の人が同社の製品のパッケージを見て、代替肉だと判断した」という調査を提示した。行政裁判所は「ビーガン」という言葉が明確に表示されている限り、消費者に誤解を与えることはない(代替肉を肉と誤認することはない)ため、同社が用語を禁止する必要はないと判断した。そして、連邦内務省がこの判決に異議を唱え、連邦最高裁判所に上告したのだった。
最終的に、連邦最高裁判所は行政裁判所の判決を覆したわけだが、EU(スイスは非EU加盟国)でも、同様の動きが起こっている。先月、欧州委員会(EUの行政執行機関)は、代替肉製品のパッケージで29の動物関連用語の使用を禁止することを提案した。消費者が用語を見て肉なのかどうか混乱してしまうのを避けるべきだ、という主張だ。
食肉業界への配慮か?
代替肉のパッケージは、本当に消費者の誤解を招きやすいのだろうか。スイスの市場を見れば、そもそも「精肉・加工肉製品」と「代替肉」の売り場は切り離されている。
法の調整は、「代替肉の人気に押され、今後、精肉の消費量がどんどん下がる」という食肉業界の懸念を解消するためにも必要なのかもしれない。ドイツのハインリッヒ・ベル財団の『肉図鑑2021』では、世界の市場で占有率が圧倒的に高い精肉は15年後には40%にまで下がる可能性があると指摘している。
