「個人」から「行政」へ、持続可能なシステムづくり

河村氏の活動が注目に値するのは、「個人」の限界を超えて「行政」を巻き込み、さらには「企業」との連携で持続可能な支援の循環を作り出した点にある。

前橋市では、ふるさと納税を活用した児童養護施設の子どもたちへの自立支援制度を確立した。また、民間企業と連携し、食品ロスに注目した食糧支援の仕組みづくりを構築した。単なる個人の寄付に依存する支援活動には限界がある。だからこそ持続可能なモデルの構築が必要であり、その構築手法は社会課題解決のヒントに満ちている。

本書は、困難な環境で育った一人の個人が、いかにして社会を動かす影響力を身につけ、具体的な変化を生み出していったかを克明に記録している。「伊達直人」という匿名の個人から始まり、全国的な社会現象を引き起こし、行政の制度化へと発展させていった河村氏の軌跡は、「個人ができることは限られている」という言い訳を超えて、社会変革の可能性を示す貴重な証言となっている。

■ 河村正剛(かわむら・まさたけ)

社会現象となった『タイガーマスク運動』の発端となった人物。自身が孤児として育ち、16歳から一人暮らしをしながら高校に通う。自動車整備会社勤務を経て営業職としてカラオケ機材大手に就職。24歳から児童養護施設への寄付を開始。2010年クリスマスに前橋市の児童相談所にランドセルを贈り話題となる。現在は行政や民間企業と協力し、児童養護施設やひとり親などの支援などを続けている。

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『影響力を上げる』書影

『影響力を上げる』

河村正剛[著]

CCCメディアハウス[刊]

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